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もっとハマる!インド映画講座

  • 踊らない?歌わない?最新インド映画

    インド映画の最大の特徴は、劇中に歌と踊りが入ることだ。歌と踊りはインドの古典芸術では演劇と区別されていない。近代になり、映画という新しいメディアが誕生してからもその伝統が守られ、無声映画時代から当然のように歌と踊りのシーンが映画中に挿入されていた。その後、技術の発達に伴い、映画がトーキー化、カラー化、ワイドスクリーン化、マルチトラック化することで、歌と踊りはさらに豪華絢爛になり、ますますインド映画の欠かせない要素となった。
    ただし、歌と踊りで彩られたメインストリームの娯楽映画とは一線を画した、歌と踊りの入らないシリアスな映画作りの潮流も古くからインドには存在する。サタジット・レイ監督の『大地のうた』(55)は日本の映画愛好家にもよく知られているし、1960年代には国が良質な社会派映画を振興し始め、パラレル・シネマ運動が隆盛した。21世紀に入り、娯楽映画の範疇の中でも、歌と踊りが入らない作品が登場し始め、興行的な成功も収めるようになった。歌がダンスを伴わず、BGMとして使われるのはもはや定番だ。特にヒンディー語映画ではその傾向が顕著で、ダンスシーンが少ない、もしくは全くない娯楽映画は既に珍しくない。 文:高倉嘉男(インド映画研究家)
  • 北インドと南インドで違う!筋肉美の捉え方・描き方

    『マッスル 踊る稲妻』主演のヴィクラム
    「脚本に必然性があるなら脱ぎます(そうでなければ脱ぎません)」、昭和生まれには懐かしいフレーズだ。このような宣言は明文化されることはないが、南インドのヒーロー男優(女優ではない、念のため)の基本的な姿勢であるようだ。一方の北インド・ヒンディー語映画界(ボリウッド)では、俗にシックス・パックと称する割れた腹筋をトレーニングで作って映画中で見せびらかすことは、ヒーロー男優たるものの最低限のたしなみのようになってきており、観客も明らかにそれを求め、楽しんでいる。
    この傾向の先駆者はサルマン・カーンだという見方も共有されている。南インドはというと、一般に性的な表現に対して保守的な風土があり、男女を問わずの体の露出や下ネタなどは見下される傾向がある。アクション映画に出演する男優たちは、日頃から体を鍛えており、「みっともなくて見せられない体」であるわけではない。あくまでも文化の枠組み中で脱がない選択をしているのだ。ただし、2010年代後半からこの傾向も徐々に緩みつつあり、「どんどん脱ぎます」から「脚本に必然性があるなら脱ぐ」、「試しにちょっと脱いでみる」、「絶対に脱がない」までのタイプに分かれるようになってきた。『ACTION アクション!!』のヴィシャールは最初のカテゴリーに入るかもしれない。『マッスル 踊る稲妻』のヴィクラムは二番目だろう。 文:安宅直子(フリー編集者)
  • 『マッスル 踊る稲妻』主演のヴィクラム
  • 観る前に知っておくと楽しい、インド映画娯楽9要素

    インドの娯楽映画は一般に「マサラ映画」と呼ばれる。「マサラ」とは香辛料のことだが、ここでは特に、日本の七味唐辛子のように、あらかじめ数種類の香辛料がミックスされ、料理の風味を引き立たせるために使われる調味料ガラム・マサラのことを指す。笑いあり、涙あり、歌あり、踊りあり、アクションあり、ロマンスあり、とにかく様々な娯楽要素がミックスされた映画、という訳である。
    インドの古典的な芸術理論書には、「ナヴァラサ」と呼ばれる9つの情感のことが書かれている。9つの情感とは、恋情、憤激、勇武、憎悪、滑稽、悲愴、奇異、驚愕、平安の9種類で、これらを映画のキャッチコピーなどによく使われる用語に当てはめるならば、順に、ロマンス、リベンジ、アクション、ヴィラン、コミカル、トラジック、ミステリー、スリル、カタルシスになるだろうか。芸術理論書では、1本の演目にこれらの内の1つか2つを盛り込むことが提唱されているが、現代の典型的なインド娯楽映画では、旺盛なサービス精神から、古典芸能で重視されるこれら9つの要素を1本の作品に全て盛り込もうとしており、それが「マサラ映画」と呼ばれる由縁となっている。 文:高倉嘉男(インド映画研究家)
  • 「インド映画」は存在しない!?
    インド映画の地域性

    インドは多言語国家であり、地域ごとに言語が異なる。インドには全国津々浦々で通用する単一の言語がなく、映画も各地の言語ごとに作られ、それぞれの地域の中心都市に映画製作の拠点が散在する。各拠点にスターがおり、特色ある映画作りが行われている。よって、いわゆる「インド映画」は、実際にはインド各地で作られる各言語の映画の集合体である。「ボリウッド」という言葉があるが、これもムンバイを拠点とするヒンディー語映画のみを指す。
    ヒンディー語は、北インドを中心に全人口の4割が母語とする最大言語で、ヒンディー語映画の市場もインド最大だ。北インドでは他に、コルカタ拠点のベンガル語映画や、ヒンディー語映画と同じムンバイ拠点のマラーティー語映画などが有力である。 一方、南インドでは主に4つの言語が話されており、やはりそれぞれ映画産業が盛んだ。チェンナイ拠点のタミル語映画、ハイダラーバード拠点のテルグ語映画などが強勢を誇っている。 これら各映画産業が互いに影響を与え合いながらインド映画は発展して来ている。近年では相互の吹替が盛んで、大予算映画は、ヒンディー語・タミル語・テルグ語の三言語同時公開が一般的だ。 文:高倉嘉男(インド映画研究家)
  • 2世・3世俳優が続々!インド映画界の血統主義

    シャー・ルク・カーン(左)とサルマーン・カーン(右)
    インドでは、カースト制度の影響で、家業を同じくする男女が結婚することが多い。そして、時代の進展と共に新しく生まれた職業もすぐにカースト制度に取り込まれる。映画という、近代に入って成立したメディア・産業も同様である。インドで映画が作られ始めて100年余りが経ったに過ぎないが、既に「映画カースト」と呼ばれる、映画を家業とする人々がスクリーンの表と裏で幅を利かせており、強固な血統主義と人脈主義が存在する。
    もっとも有名かつ由緒正しい映画カーストはカプール家で、現在はインド映画黎明期に活躍した初代プリトヴィーラージ・カプールから数えて4世代目の男優ランビール・カプールがスターとして君臨している。
    現在、一線で活躍するスターたちの出自を調べてみると、実にその半分が映画カースト出身である。裏を返せば、残りの半分は、家族や親戚に映画関係者を持たずに映画界に飛び込み、のし上がったということであり、インド映画にはそれだけ部外者を受け入れる余地があるとも言える。ヒンディー語映画界の「3大カーン」の内、サルマーン・カーンとアーミル・カーンは映画カースト出身だが、シャー・ルク・カーンだけは自力で大スターになった。 文:高倉嘉男(インド映画研究家)
  • シャー・ルク・カーン(左)とサルマーン・カーン(右)
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