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カンヌ映画祭、今年の見どころは?2018/04/20 UP 放送日時

カンヌ映画祭、今年の見どころは?

 今年71回目になるカンヌ映画祭が5月8日にオープニングを迎える。4月12日にラインアップの発表とプレジデントのピエール・レスキュール、ディレクターのティエリー・フレモーの記者会見がパリで行われ、その模様がネットで同時中継された。発表されたラインアップで、日本にとっての大きな話題は、是枝裕和『万引き家族』と濱口竜介『寝ても覚めても』の2本がコンペティションに選出されたことだろう。

 『万引き家族』は、万引きという犯罪で繋がった家族の危うさを描いたもので、父親をリリー・フランキー、母親を安藤サクラが演じる。是枝にとっては5度目のエントリーで、『誰も知らない』の男優賞(柳楽優弥)、『そして父になる』の審査員賞以上の賞を狙う。

 濱口竜介は15年に5時間を超える大長編『ハッピーアワー』で、主演の4人がロカルノ映画祭女優賞を受賞して注目された。『寝ても覚めても』は芥川賞作家柴崎友香の小説の映画化で、同じ顔をしているが中身はまったく違う男を愛してしまう女を描いたもので、主演は東出昌大と唐田えりか。濱口はカンヌ初登場でコンペ初エントリーである。

 今年のオープニングはイランのアスガー・ファルハディ『エヴリボディ・ノーズ(皆が知る)』。13年にベレニス・ベジョが女優賞を獲った『ある過去の行方』に続いて、イラン国外で撮った作品で、スペイン映画界を代表する国際派スター、ハビエル・バルデムとペネロペ・クルスの共演。イランはファルハディと並んで、名匠ジャファル・パナヒ『3つの顔(原題)』がコンペにエントリーした。パナヒは『白い風船』でカメラドールを獲って以来のカンヌだが、その間に『チャドルと生きる』でヴェネツィア映画祭金獅子賞、『人生タクシー』でベルリン映画祭金熊賞を受賞している。どちらかがパルムを獲れば、キアロスタミ以来、イランで2度目の受賞となる。

 今年私が最も驚いたのはスパイク・リーのカムバックだ。スパイクは89年に彼の最高傑作『ドゥ・ザ・ライト・シング』をひっさげてコンペに初登場したものの無冠に終わり、その2年後に『ジャングル・フィーバー』でパルムに再挑戦するが、サミュエル・L・ジャクソンの助演賞に終わった(しかも、この助演賞はスパイクのために、その年だけ特別に作られた賞だった)。この仕打ちに怒ったのか、以後スパイクはカンヌをしばらく離れていた。だからこそ、新作『ブラッククランスマン(原題)』で、3度目の正直でのパルム受賞となるかが注目だ。

 もう一人、パルム・ドール最右翼と思われるのは中国のジャ・ジャンクー『灰は純白(原題)』である。内容的には01年から17年までのラブ・ストーリーで主演はチャオ・タオということくらいしか分かっていないが、ジャ・ジャンクーは『長江哀歌』でヴェネツィア映画祭金獅子賞、カンヌでは『罪の手ざわり』で脚本賞を受賞した世界的な名監督であるばかりでなく、昨年は黄金の馬車賞(功労賞)を受賞し、審査員の経験もあるなど、映画祭への貢献度、知名度ともに抜群である。彼がパルムを受賞すると、中国映画(長編)では93年のチェン・カイコー監督『さらば、わが愛/覇王別姫』以来、25年ぶり2度目となる。

 その他の注目作としては、『イーダ』でアカデミー外国語映画賞を受賞したパヴェウ・パヴリコフスキ監督『冷戦(原題)』、『イット・フォローズ』が話題になったアメリカの新鋭デヴィッド・ロバート・ミッチェルのアンドリュー・ガーフィールド主演のスリラー『アンダー・ザ・シルヴァーレイク(原題)』などがある。

 今年はパリ5月革命のあおりで映画祭が中止になった68年から数えて50年目の記念の年にあたる。当時フランソワ・トリュフォーらと映画祭を中止する側に回ったジャン=リュック・ゴダールが、新作『イメージの本(原題)』を持って4年ぶりにコンペに登場する(今年のポスターも『気狂いピエロ』のジャン=ポール・ベルモンドとアンナ・カリーナだ)。あれから50年、カンヌが拡大変化するにつれ、フランソワ・トリュフォー、クロード・シャブロルら、ヌーヴェル・ヴァーグの盟友が姿を消していった。ひとりゴダールが今もなお元気で新作を発表してくれるのは、何よりも嬉しい驚きである。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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