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『エイリアンVS. プレデター[完全版]』2018/04/06 UP 放送日時

もしも最強の異星人が対決したら?

 『エイリアンVS. プレデター[完全版]』が素晴らしいのは、題名がすべてを表しているところにある。“スター・ウォーズ”と聞いて頭の中にジョン・ウィリアムズのテーマ曲が鳴り響かない映画ファンがいないように、“エイリアン”と聞いてH・R・ギーガーがデザインしたクリーチャーを、“プレデター”と聞いて光学迷彩の異星人を連想しないSF映画ファンはいないだろう。そんなクリーチャーを対決させたらどうなるか、というのがこの映画の見どころであり、すべてである。問題は、どうやって出会わせ、戦わせるかだ。

 2004年、巨大複合企業ウェイランド社の人工衛星が、南極の地底から発せられた謎の熱源を探知する。ウェイランド社の社長チャールズ・ウェイランド(ランス・ヘンリクセン)は、それがピラミッドの形をした謎の建造物であると知り、正体を暴いて歴史に名を残そうとする。こうして、社長秘書兼ボディガードのマックス・スタッフォード(コリン・サーモン)によって、環境問題の専門家で極寒地探検のガイド、アレクサ(通称レックス)・ウッズ(サナ・レイサン)、考古学者のセバスチャン・デ・ローサ(ラウル・ボヴァ)、化学者グレアム・ミラー(ユエン・ブレムナー)ら専門家が集められ、スタッフォード率いる傭兵隊と共に南極のブーベ島を目指す。島には100年前に突然無人になった捕鯨基地があった。一夜で出来た謎のトンネルをたどって地底に着き、ピラミッド探検を始める隊員たち。同じ頃、ピラミッドの底でエイリアン・クイーンが生き返り、産み落とした卵から孵った幼虫が隊員を襲い始める…。

 ここでタネ明かし。エイリアンは狩りの獲物としてプレデターが地球に持ち込んだもの。プレデターは文明を授ける代わりに犠牲を捧げることを人類に約束させて、ピラミッドを築いた。ピラミッドは100年ごとに稼働し、冷凍保存されたエイリアン・マザーを解凍、人間を餌にして成長したエイリアンを若いプレデターが成人の儀式として狩る、という設定である。

 監督は『バイオハザード』のポール・W・S・アンダーソン。『エイリアン』の原案ダン・オバノン、ロナルド・シャセット、『プレデター』の原案ジム&ジョン・トーマスの了解を得て、オバノン、シャセットと共同でアンダーソンが脚本を書いた。プレデターが地球をエイリアン狩りの場にしていたという発想は、オリジナル版より、『エイリアン』の前日譚を描いた『プロメテウス』や『エイリアン:コヴェナント』に近い。異星人を捕食者、人間を餌と想定すると、こういうストーリーに帰結していくのだろう。

 主演のサナ・レイサンは71年ニューヨーク生まれ。父は<レミントン・スティール>などのTVシリーズの監督、母は女優というサラブレッドで、昨年放映されたTVシリーズ<運命の銃弾>でも主演した。ラウル・ボヴァは71年ローマ生まれ。モデルを経て俳優に転身し、『シルベスター・スタローン ザ・ボディガード』でスタローンと共演してハリウッドに進出、『トスカーナの休日』でダイアン・レインと、『ローマ発、しあわせ行き』でサラ・ジェシカ・パーカーと共演したイタリアのモテ男。ユエン・ブレムナーは『トレインスポッティング』のスパッド役で強烈な印象を残したスコットランド出身の個性派。ランス・ヘンリクセンは、もちろんジェームズ・キャメロンが監督した『エイリアン2』のビショップ役で知られる名脇役で、唯一オリジナル版との関連を思わせる配役だ。

 リドリー・スコットが今も撮り続けている「エイリアン」シリーズに対して、監督ジョン・マクティアナン、主演アーノルド・シュワルツェネッガーという理想的な形のSFアクションとして誕生した『プレデター』は、続編以降、急激に質が落ちていった。それが、ビジュアル演出に優れたアンダーソンの手によって蘇り、最強の『エイリアン』と合体、リブートされたことは映画ファンとしても嬉しい。

 しかし、こうやって実際に戦わせてみると、プレデターよりエイリアンの方に“のびしろ”があり、続編、スピンオフの数が圧倒的に多い理由がよく分かる。エイリアンて、SF映画にとって本当に革新的な創造物だったのだ。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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