映画の処方箋

Vol.177

『オズ はじまりの戦い』

偉大なる魔法使いオズの誕生を描いたカラフルなファンタジー。

 『オズ はじまりの戦い』は、名作童話<オズの魔法使い>に登場する魔法使いのオズが、おとぎの国を救うために住人たちと力を合わせて悪い魔女と戦うというファンタジー映画。製作はディズニーなのでクリスマスに家族で見るのにぴったりだ。

 原作はライマン・フランク・ボームが1900年に発表し、ボームの死後も他の作家の手で書き続けられている童話界の大ベストセラー。ボームの童話が大のお気に入りだったウォルト・ディズニーは、『白雪姫』に続くアニメ作品としてオズの映画化を目指したが、先に映画化権を獲得したMGMが1939年にヴィクター・フレミング監督、ジュディ・ガーランド主演で映画化してしまった。これが不朽のミュージカル『オズの魔法使』である。

 創業者ディズニーの遺志を継いだディズニー社は、これまでオズの物語の映画化に2度チャレンジしている。1度目が1985年に『オズの魔法使』の後日譚をウォルター・マーチ監督で映画化した『オズ』、2度目がこの『オズ はじまりの戦い』で、奇術師オズが偉大な魔法使いオズになるまでの前日譚を描いている。

 舞台は1905年のカンザス。田舎のサーカスでマジックショーを演じる“偉大なる魔術師オズ”ことオスカー(ジェームズ・フランコ)は“偉大さ”とはほど遠い、女たらしのインチキ奇術師。浮気がバレて逃げ込んだ気球が竜巻に巻き込まれ、着いたところは巨大な花が咲き乱れ、極彩色の鳥が飛び交う不思議な世界。そこに西の魔女セオドラ(ミラ・クニス)が現れ、彼を予言にある“国と同じ名を持つ魔法使い”だと早合点。セオドラの案内でエメラルド・シティに着いたオズは、セオドラの姉エヴァノラ(レイチェル・ワイズ)から、悪い魔女を退治すれば本物の王と認めようと言われる。財宝に目が眩んだオズは、途中で助けた翼のある猿フィンリー(ザック・ブラフ)と陶器の少女(ジョーイ・キング)を連れて悪い魔女の住む森へ向かうが、悪い魔女だと教えられたグリンダ(ミシェル・ウィリアムズ)は、実は南の良い魔女で、エヴァノラこそが冷酷でずる賢い東の魔女だった。こうして口先ばかりで勇気の欠片もない奇術師オズは、グリンダのためにオズの国を救うことになるのだが…。

 主演のオズには、『スパイダーマン』でトビー・マグワイアの友人ハリー・オズボーンを演じたジェームズ・フランコ。オズの恋人アニー&南の魔女グリンダのミシェル・ウィリアムズは『ブロークバック・マウンテン』、『ブルーバレンタイン』、『マリリン 7日間の恋』で3度アカデミー賞にノミネートした若き実力者。あっと驚くメイクで醜い西の魔女を演じたミラ・クニスは、ダーレン・アロノフスキーの『ブラック・スワン』でナタリー・ポートマンのライバルを演じて注目された期待の新星。最近ではウォシャウスキー姉弟のSFアドベンチャー『ジュピター』で人類を救うヒロインを熱演した。美しくも冷酷な悪女を楽しそうに演じるレイチェル・ワイズは、『ナイロビの蜂』でアカデミー助演女優賞を獲得した実力派。

 監督は、私の世代には『死霊のはらわた』の、もっと若い世代にはトビー・マグワイア版『スパイダーマン』のサム・ライミ。暗くて恐ろしいファンタスティック畑の出身だけあって、子供向けのおとぎ話に、陰のあるタッチを加えて深みを出している。

 <オズの魔法使い>をアニメ映画にしようとしたウォルト・ディズニーの願いは叶わなかったが、21世紀の最新技術で見事に実写化された『オズ はじまりの戦い』が、いかにもディズニー映画らしいカラフルな世界に仕上がっているのを見ると、アニメでなくて良かったのではないかと思う。ジュディ・ガーランドが<虹の彼方に>を熱唱する『オズの魔法使』、オール黒人キャストのブロードウェイ・ミュージカル『ウィズ』、そしてこの『オズ はじまりの戦い』。どのオズも大人の童心を惹きつける魅力にあふれている。

ライター 斎藤敦子のプロフィール

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