映画の処方箋

Vol.174

『ダイバージェント』

特殊な能力を持った少女が未来社会を再生する壮大なドラマの始まり

 『ダイバージェント』は、大ヒットした『ハンガー・ゲーム』や『メイズ・ランナー』などと並んで、文明が危機に瀕した未来社会を舞台に、困難に立ち向かいながら成長する若者達の姿を描いたティーン向けディストピアSF映画の1本で、全3話からなる原作の第1作にあたる。

 映画『ダイバージェント』の舞台は最終戦争後、唯一生き残った都市シカゴ。戦争の教訓から、生存者は宗教や国家という概念を捨て、それぞれの気質によって、社会を指導し、奉仕を担当する<無欲>(アブネゲーション)、農業を担当する<平和>(アミティ)、司法を担当する<高潔>(キャンダー)、知識を担当する<博学>(エリュアダイト)、警察の役割を担当する<勇敢>(ドーントレス)という5つの派閥を作り、それぞれの特性を生かし、社会体制を守って生活していた。どれにも属すことができない者は<無派閥>(ファンクショレス)と呼ばれ、社会の落ちこぼれになる。子供達は16歳になると気質を診断するテストを受け、その結果によって自分の家族が属するグループに残るか、自分に最適なグループを選ぶか選択することになっていた。<無欲>出身のベアトリス(シェイリーン・ウッドリー)は、自分には奉仕の精神が欠けていることに気づいていた。適性テストで、検査官のトーリ(マギー・Q)から、<無欲><博学><勇敢>の3つの適性があり、結論が出ない、つまり、極めて珍しい<異端者>(ダイバージェント)であると告げられ、このことは誰にも言わないようにと警告を受ける。<異端者>は社会を脅かす危険分子として抹殺されるからだ。16歳の“選択の日”、両親の見守る前で兄のケイレブ(アンセル・エルゴート)は<博学>を、ベアトリスは<勇敢>を選択する。名前をトリスと改名し、他の派閥からの移籍組を担当する教官フォー(テオ・ジェームズ)の下で厳しい訓練が始まる。訓練は2段階で、肉体と精神を鍛錬していくが、各段階で下位の者がカットされ、<無派閥>に落とされてしまう。その頃、<博学>のリーダー、ジェニーン(ケイト・ウィンスレット)は、<勇敢>を使って<無欲>を攻撃させ、指導権を奪おうと画策していた…。

 原作はヴェロニカ・ロスが2011年に発表したヤングアダルト向けの小説「ダイバージェント 異端者」。ロスは1988年生まれで、文学を専攻中の大学生時代に執筆、卒業と同時に発表し、ベストセラーになると共に映画化権も売却したというサクセス・ストーリーだ。原作は「ダイバージェント2 叛乱者」、「ダイバージェント3 忠誠者」の3部構成(邦訳はいずれも角川書店刊)で、まったく同じキャスト映画化された。監督は『幻影師アイゼンハイム』のニール・バーガー。続編の『ダイバージェントNEO』から、『フライトプラン』のロベルト・シュヴェンケにバトンタッチし、シュヴェンケが第4作まで(「ダイバージェント3 忠誠者」を前後編の2本に分けて撮影)監督を担当。

 全4作で主演を務めるシャイリーン・ウッドリーはTVシリーズ「アメリカン・ティーンエイジャー」で注目され、『ファミリー・ツリー』でジョージ・クルーニーの娘を、『きっと、星のせいじゃない。』で末期ガンの少女を演じて注目された新鋭。相手役のテオ・ジェームズはギリシャ人を祖父に持つ英国人で、『アンダーワールド 覚醒』などに出演していたが、本格的な活躍はこれから。脇を固めるのは、<勇敢>のリーダー、エリックに『ターミネーター:新起動/ジェニシス』のジェイ・コートニー、訓練仲間ピーターに『セッション』のマイルズ・テラー、トリスの父親に『ゴースト/ニューヨークの幻』の悪役が忘れられないトニー・ゴールドウィン(祖父はMGMの創始者というサラブレッドだ)、母親に『ダブル・ジョパディー』のアシュレイ・ジャッド(母親は大物カントリー歌手ナオミ・ジャッド)、権力を握ろうと画策する悪役ジェニーンには『タイタニック』のケイト・ウィンスレットと豪華。

 複雑な設定の原作をバッサリと切った脚本に賛否両論あったようだが、映画はスピード感重視の演出でスッキリ見られる。続編を見る前に押さえておきたいシリーズ第1作だ。

ライター 斎藤敦子のプロフィール

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