映画の処方箋

Vol.037

『スクール・オブ・ロック』

ロックの野獣、JBが小学校の教室に放たれると……。

しこたま暑い今年の夏に、しこたま暑苦しいJBことジャック・ブラックを一押しで特集するムービープラスって凄すぎる。とはいえ、夏は暑いから夏であり、JBは熱いからJBなのである。真夏とJBは相性抜群だし、暑いさなかに熱い男のパフォーマンスを見るのも暑気払いになるかも。少なくとも、見終わったときに、風が涼しく感じられること受け合いだ。

 JBが初めて注目されたのは、スティーヴン・フリアーズの『ハイ・フィデリティ』で、主人公のジョン・キューザックが経営する中古レコード店の店員を演じたときだった。週3日のパートタイムで雇われたはずが、いつの間にか毎日店に顔を出すようになり、客の音楽の趣味が悪いと説教まで始め、本当はロックバンドを組みたいのだが、ノリが熱すぎて敬遠され、仲間が集まってくれない。このときのロックおたくの店員役は、まさにJBそのものといっていいほどのはまり役だった。それもそのはず、JBがカイル・ガスと組んだ2人ロックバンド“テネイシャスD”のファンだったジョン・キューザックが抜擢したのだという。夢多き青春時代を引きずりながら、大人の社会に入って現実を引き受けることに戸惑いを感じるモラトリアム世代を描いた『ハイ・フィデリティ』は、ジョン・キューザック主演作品としても、スティーヴン・フリアーズ作品としても、1、2を争う私の大好きな映画なのだが、JBの魅力が爆発した作品といったら、リチャード・リンクレイターの『スクール・オブ・ロック』だろう。

 『スクール・オブ・ロック』のJBは、ファンに見放され、自分で作ったバンドからも追い出された、落ちこぼれミュージシャンのデューイ。元相棒のネッドと一緒に借りたアパートで毎日ふて寝して過ごしているが、ミュージシャンの道を諦め、代用教員をしているネッドには同棲中の恋人がいて、家賃を溜めこんでいるデューイは二人にアパートから追い出されそうな気配。そんなところに、名門私立小学校からネッドに代用教員の採用の電話が掛かってくる。デューイはネッドになりすまし、教師として小学校の教室に乗り込むのだが、もちろん教科が教えられるはずもなく、毎日自習。そんなとき、音楽教室で生徒達の意外な才能を発見、彼らを使ってバンドを組み、バンド大会に出ようともくろむのだが…。

 いくらなんでも、JBを見て本物の教師だと思い込む教育者なんて、いるはずない。そんなバカなと思うような、突っ込みどころの多い展開だが、ストーリーの整合性を追求するのは時間の無駄というもの。この映画は、JBが小学生と一緒に教室でロックする、というのがコンセプトなのだから、多少の障害も口先三寸で誤魔化してしまうJBの勢いに乗って、ノリノリで楽しむ方が勝ちなのだ。“ロックの精神は反抗だ”、“ザ・マン(大物、権力者、教師や大人達)に反抗しろ”、と、優等生の大人しすぎる生徒達に、汚い言葉を教え込む教師なんてJB以外には考えられない。そして、ここが肝心なのだが、デューイはロッカーとしては二流、教師としては落第だが、ロックファンとしては一流で、彼が生徒達に教えるロック魂が実に真っ当であることだ。

 JBの怪演を受けて立つ子供達もいい。こまっしゃくれた学級委員のサマー、生意気な問題児フレディ、父親が恐くて何でも言うなりのザック、ピアノの天才ローレンスや、普段は内気でいじめられっ子のトミカなどが、ロックを知って、本来の才能を開花させ、成長していく。成長するのは子供達だけではない。大人も成長する。独りよがりの二流のミュージシャンだったデューイは、仲間と一緒にギグし、観客にダイブを受け止めてもらえる一人前のロッカーとなる。ラストのバンド大会の場面は、涙がでるほど感動的だ。

 映画の中で流れるロックの選曲も抜群だし、バンド大会で演奏する“スクール・オブ・ロック”もノリノリだし、熱いロックと熱いJBは、やっぱり真夏に限るかもしれない。

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ライター 斎藤敦子のプロフィール

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