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#6 声優:東地宏樹

2016年4月某日。今回東地宏樹さんが収録する番宣CMは「ウィル・スミス『ワイルド・ワイルド・ウエスト』編」、「アーロン・エッカート『アイ・フランケンシュタイン』編」、「東地宏樹 登場編」の3バージョン。普段の吹替え現場とは違う雰囲気の中で演じる東地さんは楽しそう!

ウィル・スミスさんの魅力は、ギャップ萌え

── まずは、「吹替王国」に東地さんが選ばれたことについて、ご感想をいただけますでしょうか。

小山力也さんの時にTwitterで流れてきたんで、この企画を知りました。その後、山路和弘さんがやられていたことを知って、そしたら自分にオファーが来たので、以前の方々を確認したら、藤原啓治さんに始まりそうそうたるメンバーで「おいおい、ちょっと待て、6番目って早いよ、18番目くらいでちょうどいいよ。」と思いました(笑)。

── (笑) これまで「吹替王国」で特集された方の番宣CMはご覧になりましたか?

玄田哲章さんの『ターミネーター2』編は拝見しました。随分ふざけてるんだなぁ、あそこまでやるかって思って(笑)。自分の台本を見てみたら「この程度か」っていう感じで、ちょうどいい塩梅だなと思いました。玄田さんは大好きな先輩です。「吹替王国」で特集された人は皆さん、びっくりするようないい声で、大塚明夫さんなんか、現場でも半端じゃないです!

── 「東地宏樹 登場編」では、3つのキャラクターが切り替わるシーンも通しで収録しましたよね。あれは難しくないんでしょうか?

いや、あれは違うんですよ!逆にひとつひとつ区切って収録して、何も変わらないって自分でショックを受けるくらいなら、いっぺんに収録したほうがいいと思ったのでそうしました。大丈夫でしょうか?番宣CMを見た人が「全部声が同じじゃないか」って思われるかもしれませんね(笑)。

── ウィル・スミスの『ワイルド・ワイルド・ウエスト』で、本編を収録した当時の現場はいかがでしたか?

その頃、ウィル・スミスさんの吹替えは『メン・イン・ブラック』しか経験がなかったんですが、監督が同じで、キャラクターのテイストが似ていたので、あのノリの良さを持ち込んでやりました。あとは、相手役のケヴィン・クラインさんは大好きな役者さんで、それを大好きな大塚芳忠さんを通じて絡ませてもらえて、幸せな収録でした!

── 昔やられた声と、今とでは結構違うものですか?

違いますよね。今がうまいということではないですが、『メン・イン・ブラック』なんて、再放送を観る度に「下手クソ」と思います。60代になって、40代の作品を観て「ダメだなぁ」とか思いそうですし(笑)。でも、後悔してる暇はないんですよね。その年代でできる、精いっぱいのことをするしかないと常に思っています。

『メン・イン・ブラック』の時はボロ雑巾のようになってしまいました。今でも忘れないんですけど、他の声優さんたちは先に撮り終えて、内海賢二さんが「東地、先に飲み屋で待ってるぞ」って言ってくれたんです。なんとか撮り終えて、遅れて飲み屋に行ったら「新しい仲間の東地だ」って内海さんが言ってくださって。本当に、いい思い出です。

── ウィル・スミスのコミカルさとか、あの加減はどういう調整をされているのかなと思うんですが。

ウィル・スミスさんの魅力は、ギャップ萌えですよね。あんなにギャアギャアやってるけど、締めるところは締めるっていう。あとは役者である前にラッパーなので、まくし立てるところにリズム感を出して、ラップにするとこうなるのかな、と試して、そこからセリフに戻したりしました。

── 東地さんにとって、自分の素の声に近くて、あまり事前準備しなくても自然に演じることができるような役者はいますか?

ウィル・スミスさんは、1本1本ちゃんと準備しないとできないですが、『プリズン・ブレイク』という海外ドラマのウェントワース・ミラーさんは、『レジェンド・オブ・トゥモロー』で久しぶりにアテているんですけど、合わせやすいかもしれません。彼は、セリフの前に必ず息を吸うんです。その癖が変わってなかったので、あまり準備しなくてもいけそうな感じはありますけど。いやぁ、素敵な役者さんです(笑)。

── アーロン・エッカートの『アイ・フランケンシュタイン』についてはいかがですか?

アーロン・エッカートさんの映画は好きで色々観ていました。素敵な役者さんだなと思っていて。
『アイ・フランケンシュタイン』の時は、「フランケンシュタインをこういう風にやりたかったんだろうな」っていうのが、あるシーンで見えてきて。そこをきっかけにしながら、やらせてもらった記憶があります。この他には『カンバセーションズ』っていう男女二人がしゃべりっぱなしの役をやったと思います。全く違うキャラクターですね。

── 『アイ・フランケンシュタイン』で人造人間を演じましたが、人間ではないキャラクターを演じることの難しさはありますか?

どの作品でも正解はありません。「怪物だからこんな感じ」と自分の中で決めてしまうと、その領域に限定されてしまうんですよね。そうならないように作っていこうとは思っています。それは舞台でも変わらないと思いますね。

── クリスチャン・ベールは役柄によってキャラクターが違いますよね。

あの人は尋常じゃないですよね。でもそれも作品に合わせるっていうことですよね。色んなことをやりたいのが役者さんだから。その人が、この作品で何をやりたいのかっていうヒントを探しながら観察します。そういうところは絶対にカットされていないので、そこから逆算して作っていくことが結構ありますね。

── 今回、『アジョシ』も放送されますが、英語と韓国語では違いがあるんでしょうか。

韓国語って最後に口をパカって開けてしゃべり終わることが多いんです。それに対して、吹替えでは最後に口を閉じる言葉で終わってていいのかっていう意見もあるんですけど、僕はあまり気にしません。「口を合わせる」だけではなくて、それを超える何かがあれば、そんな問題は解決できるんじゃないかなとは思います。でも、確かに韓国語は合わせにくいときはありますね。

外国映画とアニメとゲーム

── そもそも声優になったきっかけは何だったんでしょう?

大学で仲良くなった連中がすごく芝居に熱い奴らだった影響で舞台に引き込まれたというか。演劇学科の演技コースに入ったからなんですけど(笑)。ラジオCMなどをやらせてもらえるようになってから「いい声ですね」と言われることが増え、他の優れた方の研究をして今に至るという感じです。
初めて吹替えをやった金城武さんの『アンナ・マデリーナ』では大失敗して、2本目はなんとなくうまくいったんですけど、しばらく吹替えの仕事はしていませんでした。そうこうしているうちに、ウィル・スミスさんの『メン・イン・ブラック』のオーディションがあったので「経験がないわけじゃないからやってみようかな」と思ったら運よく受かって。そこからスタートしました。

── 俳優からスタートして、その後声優として活動していく中で、何か変化などはございましたか?

本当に忙しかった時期は、毎日いろんなキャラクターを演じてキツかったんですけど、それを日々こなすことで、自分の身になっていることが結構あるんですよね。アテているのがいい役者さんだと、その呼吸に合わせることで、気が付いたら自分が舞台でやろうとしている時に出てくるんです。意識しなくても、身体に入ってるんでしょうね。良い作品になれば良い声優さんが集まるので、素晴らしい方々と掛け合いができて、その繰り返しで、知らない間に力がついてきたのかなと思います。

── 外国映画の吹替えは、アニメやゲームとはどういうところが違いますか?

吹替えはすでに出来上がったもので、面白い作品もあれば、そうでない作品に声をアテることもあります(笑)。でもそういう作品こそ、どうしたら吹替版で楽しく観てもらえるか考えるので、僕らは逆に盛り上がったりするんですよね。作品を傷つけないように気をつけながら、でも何かを付け加えてさらに良いものにできればいいなと思っています。

アニメは自由度が高いですね。自由にやらせてもらうことが多いので、難しい部分もあり、責任感も強いかもしれません。洋画の場合は責任感というよりも、映画の中の俳優さんたちが作ったガイドがありますから。ゲームは修行だと思っています(笑)。ずっと一人でスタジオにこもりますから、何日も何日も。

── 得意な役柄はありますか?

得意な役か・・・比較的キャスティングされることが多いのは「兄貴キャラ」ですかね。発注が多いというのは得意という事なんでしょうか(笑)。

── ご自身のキャラクターに近いですか?

そうかもしれませんね。数人の先輩には可愛がられていますが、後輩を可愛がる方が多いような気がします。あと、男の友達が多いです。

人に「どうすればいいですか?」って聞くな

── 尊敬する先輩として、大塚芳忠さんや堀内賢雄さんのお名前が出ていました。現場でご一緒することも多いんでしょうか?

そうですね。お二人は、ふざけてタメ口をきいても許して下さる、とっても寛大な先輩です。
芳忠さんは、現場が本当に素晴らしいです。圧倒されます。うまい歌を聞いているような感じさえします。でも、呑みに行ったらひどいんですよ。もうふにゃふにゃで、エリンギみたいになっちゃう人で、そのギャップがすごすぎます。賢雄さんは現場も酒場も面白いです。そういう背中を見て学びました。山路さんとも『ザ・フォロイング』でご一緒させてもらって、ちょい悪オヤジの色気がたまらんのですよ。大塚明夫さんも、玄田哲章さんも、みんなすごいですよ。素敵な先輩方と一緒にやれるということは幸せです。今後は自分が後輩にとってそういう人物にならないといけない境目に来ているんだなという気がします。ただ、僕は先輩方をまだまだ見ていたい。

── 後輩や、声優を目指している方に向けてメッセージはありますか?

人に「どうすればいいですか?」って聞くな、と言いたいです。何をやらなきゃいけないのかは、見ていれば分かります。「こうなりたい」と思ったら、自分でやるしかない。
あとは普段の生活で泣いたり笑ったり怒ったり悲しんだりする経験が助けになる仕事です。引きこもりだったり、いじめられていたり、明るい学生生活を送れなかった人でも、そういう経験さえも生かせる世界だと思います。
ただ、やはり人と関わることは大切だと感じます。「アニメだけ」とか「ネットばかり」で人と会わずでは、表現できかねる世界だと思います。傷ついて、失敗して、成長していきましょう。僕も現在進行形です。

── ご自身も、人に聞かず、何も教わらない状態から先輩の背中を見て学んだとおっしゃっていましたね。

僕は本当に運が良くて、いい現場にたくさん使っていただけたんですよ。その頃は、日曜洋画劇場とか金曜ロードショーとかを各ディレクターさんがテレビで観てくれていて、新しい奴が出てきたらじゅんぐり使ってくださった。その度に死に物狂いで頑張って結果を出し、また呼んでもらうと喜びを感じるじゃないですか。その喜びの連鎖が今につながっていると感じます。

── 普段、喉のケアはどんなことをされていますか?

風邪をひかないように、風呂上りに塩水で鼻うがいをしています。少々風邪気味でも治っちゃいます。あとは、7~8年前に疎外感を感じてタバコをやめました。やめた時は扁桃炎になっちゃって。解毒しようとしたんでしょうね。それ以来は調子良くなりました。

── 視聴者に向けてメッセージをお願いします。

バラエティに富んだ作品を放送してくれるのですごく嬉しいです。全部観ていただきたいなぁと思います。吹替えの良さというのは、字幕では表現しきれない幅を表現できるところです。複数の人物がいっぺんにしゃべっているシーンは、字幕では全部を把握することはできません。だけど吹替えはいっぺんに理解できるので、どれだけ情報の差があるんだろうと思います。あとは、腕のある声優の皆さんの職人芸に注目して観ていただければ嬉しいです。

次回予告
8月は樋浦勉さんの吹替作品を特集します!
ブルース・ウィリス、ジョン・マルコヴィッチ、ロビン・ウィリアムズなどで有名な樋浦勉さんの吹替え作品が登場。
ぜひご期待ください。

作品詳細
6月12日(日)15:00~ 5作品連続放送

『ワイルド・ワイルド・ウエスト【地上波吹替版】』
ウィル・スミス

6月12日 21:00放送

60年代の人気TVシリーズをウィル・スミス主演で映画化。西部開拓時代を舞台に、破天荒な連邦特別捜査官コンビの活躍を描く娯楽アクション。

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『ファーナス/訣別の朝【日本語吹替版】』
クリスチャン・ベール

6月12日 18:45放送

クリスチャン・ベールら、実力派キャストの共演で贈る犯罪ドラマ。ある夜を境に絶望の淵に追い込まれた男の、孤独な復讐劇を描く。

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『アイ・フランケンシュタイン【日本語吹替版】』
アーロン・エッカート

6月12日 15:00放送

ホラー映画の伝説の怪物が新たなダークヒーローとして甦る!アーロン・エッカート主演。フランケンシュタインの“その後”を描いたSFアクション。

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『アジョシ【日本語吹替版】』
ウォンビン

6月12日 23:00放送

ウォンビンが鍛えられた肉体で本格アクションを披露。過去に秘密を抱えた男が、心を通わせた少女を救うため犯罪組織と戦うサスペンス。

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『ソルト【日本語吹替版】』
リーヴ・シュレイバー

6月12日 16:45放送

アンジェリーナ・ジョリー主演のサスペンス・アクション。二重スパイの容疑をかけられたCIA女性エージェントが、真相究明に奔走する姿を描く。

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プロフィール

東地宏樹(とうち・ひろき)

5月26日生まれ、東京都出身。
洋画の吹替えのほか、アニメ・ゲーム・海外ドラマなどでも活躍。
洋画では、ウィル・スミス、クリスチャン・ベール、アーロン・エッカートなど多くの役者の吹替えを担当。