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映画の処方箋

何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
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『ロスト・バケーション』2018/07/27 UP 放送日時

ストーカー並の凶暴サメと闘う真夏のサバイバル映画

 『JAWS/ジョーズ』の歴史的大ヒット以来、半世紀が経ち、“サメ”は映画の1ジャンルとして定着した観がある。夏になれば海、海に行けばビーチ、ビーチには水着の美女、水着の美女が泳げばサメに襲われる、というのがその決まり。『ロスト・バケーション』もまた、同じ決まりを踏襲して水着の美女(ブレイク・ライヴリー)がサメに襲われる映画であるが、監督がジャウマ・コレット=セラなので、ただのパニック映画にはなっていない。

 ナンシー(ブレイク・ライヴリー)は、アメリカ人の医学生。愛する母親をガンで亡くしたばかりで、医学の勉強に興味を失い、母親が自分を妊娠していたときに訪れたという思い出のビーチでサーフィンをするためにメキシコまでやってきた。その日、二日酔いの友人をホテルに残して、地元の人しか知らない、夢のように美しいビーチにたどり着き、さっそくサーフィンを楽しむナンシー。夕暮れになり、地元の青年たちが帰っても海に残り、最後の1本を決めようとしてバランスを崩して海中に放り出されたとき、ふいに巨大なサメが襲いかかってくる。切られた腿の傷をリーシュコード(サーフィンと足首をつなげる部品)で止血し、干潮のときだけ現れる岩礁の上に避難したものの、そこはビーチから200mも沖にあり、助けを呼ぶ彼女の声は届かない。ナンシーは絶望的な状況の中で、生きのびるための方法を必死で探るが…。

 主演のブレイク・ライヴリーは87年8月25日カリフォルニア州生まれ。父親は俳優、母親は演技コーチでタレント・マネージャー、兄姉も俳優という芸能一家で、子供の頃から自然に女優の道に進んだ。05年『旅するジーンズと16歳の夏』で、仲良し4人娘の1人ブリジットを演じて注目され、07年から放映されたTVシリーズ<ゴシップガール>で、誰もが憧れる完璧な女の子セリーナを演じてスターになると同時にファッションアイコンとしても注目を集めるようになった。映画出演は『アデライン、100年目の恋』や、ウディ・アレンの『カフェ・ソサエティ』などがあるが、キャリアとしてはまだまだ。ノーメイク、出ずっぱりで、俳優としての真価を見せたのは本作が初めてだろう。私生活では12年にライアン・レイノルズと結婚し、2児がいる。

 監督のジャウマ・コレット=セラは74年スペインのバルセロナ生まれ(ジャウマのカタロニア語読みはジャウム)。18歳のときに映画監督になるためアメリカに渡り、コロンビア大学で学ぶ。MTV、CM制作を経て、『蝋人形の館』で長編監督デビュー。『エスター』でファンタ系の映画ファンから注目され、『アンノウン』から始まるリーアム・ニーソン主演4作で監督としての名声を確立した。

 コレット=セラ映画の特徴は、上手いのも下手なのも荒っぽいのも、とにかくアイデアだけはたっぷり詰め込んで、観客をフルに楽しませようというサービス精神と、B級映画テイストにある。『ロスト・バケーション』は、そんな彼の良さが最もよく出た1本で、途中までは文句なく完璧なのに、なぜかサメが出てくると、いきなり作り物っぽくなるところがご愛敬。やっぱり長年培ったB級テイストから離れられないのかもしれない。

 さすがCM出身だけあって、近景、遠景、アップ、水中撮影、スローモーションなど、映像テクを駆使してスリルを盛り上げる、最初から最後までドキドキしっぱなし。ブレイク・ライヴリーのスレンダーな肢体もたっぷり楽しめる。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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