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映画の処方箋

何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
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『TAXi』2017/03/10 UP 放送日時

ベタな笑いはフランスの伝統、ベッソン印のアクション・コメディ

 『TAXi』は、リュック・ベッソン製作・脚本、ジェラール・ピレス監督で大ヒットし、のちにシリーズ化されたアクション・コメディ。見どころは猛スピードで疾走する改造タクシーによるカーチェース。監督は2作目からジェラール・クラヴジックに交代するが、製作と脚本はずっとリュック・ベッソンで、この成功の方程式はベッソンのもう1つのドル箱ヒットシリーズ『トランスポーター』にも踏襲されている。

 第1作の舞台はマルセイユ。ピザの宅配人をしていたスピード狂のダニエル(サミー・ナセリ)は、念願の認可が下りて個人タクシーへ転職。ところがプジョー406を改造した愛車のスピードに耐えられる客はなく、必ず吐いてしまうほど。そんな中、彼を気に入った女性に頼まれて息子エミリアン(フレデリック・ディーファンタル)を乗せることになったのだが、彼は刑事で、着いたところは警察署。ダニエルはスピード違反で逮捕されそうになるが、代わりにメルセデス・ベンツに乗った強盗団による連続銀行強盗事件の捜査に協力することになる…。

 第2作は、日本の防衛庁長官がマルセイユ警察のマフィア対策を視察にやってくる。運転の腕をかわれて長官の送迎車両の運転手に抜擢されたダニエルだが、突然現れたテロリスト集団に長官とエミリアンの恋人の刑事ペトラ(エマ・シェーベルイ)を誘拐されてしまう。その裏には日本のヤクザの大親分による大統領暗殺計画があった。ダニエルは、長官とペトラを救出するため、エミリアンと共にパリへ向かうが…。

 第3作では、エミリアンはペトラと結婚し、幸せな生活を送っている一方、ダニエルは愛車のことばかり考えて恋人リリー(マリオン・コティヤール)に愛想をつかされる。その頃、マルセイユでは巨大なトラックを運転するサンタクロース強盗団が暴れ回っていたが、間抜けなジベール署長ではなかなか逮捕できない。果たしてエミリアンとダニエルは謎の強盗団の正体を暴き、一味を逮捕できるだろうか。

 第4作が今のところの最終話で、ダニエルとエミリアンは父親になり、レオとマックスという息子がいる。相変わらずドジばかりのエミリアンは、コンゴへ護送途中の凶悪犯アルベールをうっかり逃がしてしまう。ジベール署長からクビを言い渡されたエミリアンは、ダニエルの助けを得て、アルベールを逮捕するためモナコへ向かう。

 一にも二にもカーチェースのために作られた映画で、南仏マルセイユ(『フレンチ・コネクション』の街だ)の坂道を疾走するスピード感が見どころ。車のキャラもきちんと色分けられ、第1作はプジョー406、メルセデス・ベンツ500E、第2作は三菱ランサーレボリューションIV、第3作は三菱ランサーレポリューションVII、第4作はプジョー407の、それぞれ改造車が登場する。改造車のカーチェースといえばポール・ウォーカーの出世作にして遺作となった『ワイルド・スピード』シリーズを連想するが、『TAXi』の方が3年ほど早い。さすがベッソン、先見の明がある。

 このシリーズには喜劇王ルイ・ド・フュネスが間抜けな憲兵隊長を演じた『大混戦』シリーズという格好のお手本があり、そこにカーチェースを加えてアクションに仕立てたところが目の付け所。泥臭いほどベタな笑いはフランスの伝統でもある。上映時間が1時間30分足らずと短いので(これも製作費を節約し、劇場での上映回数を増やすためのベッソンの成功の方程式)、目くじらたてずに気軽に楽しもう。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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