知って得する!

映画の処方箋

何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
あなたに効くエピソードや解説を処方します!
用法用量を守って正しくお使いください。

197
『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』2016/09/23 UP 放送日時

アクションは肉体だ!

『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』は、マーベル・コミックの元祖スーパーヒーロー、キャプテン・アメリカの誕生を描いた2011年の『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』の続編で、前作のラストで爆弾を乗せた飛行機ごと北極の氷の海に沈んだキャプテン・アメリカが、70年後に冷凍状態から蘇り、悪の組織ヒドラが生み出した超人ウィンター・ソルジャーと闘う。

この作品はキャプテン・アメリカ単独のシリーズでは2作目だが、マーベル・コミックのヒーローたちを同じ世界観でクロスオーバーさせるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品としては9作目で、11月に放送される『アベンジャーズ』の2年後を描いている。

 諜報機関シールズを率いるニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)の下で働きながら、現代へ適応しようと苦労しているキャプテン・アメリカことスティーヴ・ロジャース(クリス・エヴァンス)は、海賊バトロック(ジョルジュ・サンピエール)一味に強奪されたシールズの船を奪還するため、ブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)、シールズの対テロ特殊部隊ストライクを率いるブロック・ラムロウ(フランク・グリロ)らと救出に向かう。作戦中にロマノフが船のコンピュータからデータを盗んでいるところに出くわしたロジャースは、帰還後、フューリーから、シールズの高官アレクサンダー・ピアース(ロバート・レッドフォード)が主導して進めている「インサイト計画」のことを知らされる。「インサイト計画」とは、人工衛星から人々の意識を分析してテロリストを特定し、テロが起こる前に排除するというもので、自由を制限する代わりに安全を保障するという計画だが、フューリーは不審なものを感じてロマノフにデータを盗むよう指示したのだった。ピアースに計画の延期を申し入れたフューリーは、謎の暗殺者ウィンター・ソルジャー(セバスチャン・スタン)と暗殺集団に襲撃を受け、瀕死の状態でロジャースの家に現れ、「誰も信用するな」と警告し、USBメモリーを手渡すも、再度襲撃を受けて死亡する。一方、本部に呼び出されたロジャースはピアースに情報を渡すことを拒否し、逃亡犯として狙われる身となる。ロマノフと共にニュージャージー州にあるシールズの古い格納庫へ向かったロジャースは、旧式のコンピュータ内に肉体のない意識だけになっていたヒドラの科学者アーニム・ゾラ(トビー・ジョーンズ)から、ヒドラがシールズ内部で密かに活動を続けていたことを知る。追われるロジャースは朝のジョギングで知り合いになった退役軍人サム・ウィルソン(アンソニー・マッキー)に助けを求める。彼はウィング・パックを装着して空中戦を行う特殊訓練を受けた元パラシュート兵だった…。

 MCUの作品群は、個々のスーパーヒーローを主人公にした単独のシリーズと、アベンジャーズとしてのシリーズが重層しているため、登場人物とプロットが次第に複雑に錯綜していく。特にアベンジャーズは、シリーズが進むにつれて、戦いのための戦い的な様相を帯び、スーパーヒーローたちがどこへ向かっているのかわかりにくくなった感がある。今や、よほどのマーベル・ファンでなければ、ついていくのが大変な状態なのだが、「インサイト計画」阻止を描いた『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』は、敵と味方、正義と悪がはっきりしているうえに、ストーリーがシンプルなので、登場人物間の因縁や、戦いの流れを知らなくても十分楽しめる。特にいいのは、安全のためには自由を犠牲にすべきかという映画のテーマで、まさに今の情報化社会そのものの問題でもあり、深く考えさせられたし、人々から自由を奪い取ろうとする悪の首謀者役に、リベラルな人権派として知られる名優ロバート・レッドフォードをキャスティングしたのも着眼がいい。

 見どころは、もちろん海賊一味から船を奪還する冒頭から、ヘリキャリアを爆破するクライマックスまで、息つく暇もなく連続するアクション・シーンの数々だが、私のお薦めは、冒頭の海賊バトロックとキャプテン・アメリカの一騎打ちである。バトロックを演じたジョルジュ・サンピエールは本物の格闘家で、総合格闘技UFCの元チャンピオン。彼の切れのいい体の動きを、カット割りなどの姑息な技術を使わず、引き気味のフルサイズで撮った場面が素晴らしい。やっぱりアクションは肉体だ。絶対にお見逃しなく。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

メルマガ限定コラムもチェック!

ここでしか読めないコラムを毎月お届け。

最新のコラム

コラム一覧

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年