知って得する!

映画の処方箋

何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
あなたに効くエピソードや解説を処方します!
用法用量を守って正しくお使いください。

195
『REC/レック』2016/08/26 UP 放送日時

スペインで大ヒットしたPOVパニック・ホラーをイッキ見!

 『REC/レック』は2007年にスペインで大ヒットしたパニック・ホラー映画で、ヒット作によくあるようにシリーズ化されて4本作られた。映画の手法は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』で注目されたPOV方式(Point of viewの略で、主観カメラのこと)。お化け屋敷を歩くような、リアルな恐怖とドッキリが詰まっていて、暑い夏にイッキ見するのにぴったり。

 記念すべき第1作『REC/レック』の舞台は現在のバルセロナ。レポーターのアンヘラ(マヌエラ・ベラスコ)とカメラマンのパブロ(パブロ・ロッソ)が夜の消防署に取材に来る。夜も更けた頃、アパートに閉じ込められた人がいるという通報で出動することになり、アンヘラたちも同行する。問題の建物の前にはパトカーも来ており、住人によれば、一人暮らしの老女の部屋から叫び声がしたので警察にも通報したのだという。消防士と警官が部屋のドアを壊して中に入ると、血まみれの老女が、いきなり襲い掛かってきた。瀕死の警官を運び出そうするが、すでに玄関は保健局によって封鎖され、誰ひとり外に出られなくなっていた。カメラを止めろという警官に逆らい、起きたことをすべて録画して公表すると主張するアンヘラ。やがてカメラは恐ろしい惨劇を目撃することになる…。

 『REC/レック2』は第1作の続編で、前作が終わった時点から始まる。政府の専門家というオーウェン博士(ジョナサン・メヨール)が特殊部隊に付き添われて封鎖された建物に入ることになる。まずアパートの最上階の部屋に向かう一行。実は、その部屋の主は悪魔に憑かれた少女を研究していたアベルダ神父で、オーウェン博士もまた極秘の任務を帯びてきた神父だった。屋根裏の奥でアベルダ神父が保存していた少女の血を発見するが、試験管を落として割ってしまう。何とか悪魔の血を採取しようとする博士だが、伝染病に感染した住民が次々に襲い掛かってくる…。

 『REC/レック3 ジェネシス』はスピンオフ的な作品で、クララ(レティシア・ドレラ)とコレド(ディエゴ・マルティン)が主人公。家族や親戚、友人たちが集まってクララとコレドが結婚式を挙げ、広い屋敷に場所を移して盛大に披露宴が開かれている。すると、犬に噛まれたと言って腕に包帯を巻いていた叔父が、突然人に襲い掛かって会場はパニック状態に。慌てて逃げだし、別れ別れになってしまったコレドとクララは、ゾンビと化して襲い掛かってくる家族や友人たちを退治しながら、何とか再会しようとするのだが…。

 『REC/レック4 ワールドエンド』は今のところの最終話で、『REC/レック2』が終わった時点から始まる。封鎖された建物に侵入した特殊部隊は、血の海の中に倒れている瀕死のアンヘラを発見する。アンヘラは大型貨物船を改造した隔離施設に収容され、船は出港。だが、完全な防疫体制が整えられた船の中で感染が発生。アンヘラに疑惑の目が向けられるがアンヘラは陰性だった。しかし感染が船内に広がっていき…。

 1作と2作目はジャウマ・パラゲロとパコ・プラサの共同監督。3作目はプラサ、4作目はパラゲラがそれぞれ単独で監督している。パラゲロは68年カタロニア生まれの50歳、プラサは73年バレンシア生まれの43歳。スペインは知る人ぞ知るホラー映画大国で、パラゲロもプラサも10本を超える監督・脚本作のあるベテラン。『REC/レック』は、元は『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』のPOV方式で低予算ホラー映画を70分台でという企画。ストーリーは巨匠ジョージ・A・ロメロに端を発する、オーソドックスなゾンビものながら、ツボを心得た演出で、スピード感のあるB級ホラー映画になった。続編からは、二人の監督が蓄積してきたホラー知識が発揮され、ゾンビ+オカルトだったり、コメディ風だったり、ゾンビ+寄生生物だったりの味付けが楽しめる。ただし、あくまでB級なので、話が深まらないのが難点だが、テレビ・クルーが取材先でゾンビに遭遇するというワン・アイデアで突っ走った第1作を、4作まで引っぱったのは立派だ。

 ちなみに、全4作の撮影を担当したパブロ・ロッソは、1作目ではテレビのカメラマン、2作目では特殊部隊の撮影担当の隊員として登場(とはいえ、姿はほとんど見えない)。主人公たちが親しげにパブロと呼び掛ける相手が実は本物の撮影監督という“仕掛け”が、POVらしい現場の臨場感を高めている。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

メルマガ限定コラムもチェック!

ここでしか読めないコラムを毎月お届け。

コラム一覧

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年