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何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
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『続・荒野の1ドル銀貨』2016/07/20 UP 放送日時

マカロニ・ウェスタンの雄、ジュリアーノ・ジェンマの魅力。

 『続・荒野の1ドル銀貨』は、1960年代に世界中で人気を博したマカロニ・ウェスタンの代表作ともいえる作品で、主演はジュリアーノ・ジェンマ。邦題に“続”とあるが、同じジェンマ主演の『荒野の1ドル銀貨』(監督はジョルジオ・フェローニ)の続編ではなく、ドゥッチオ・テッサリ監督の『リンゴの拳銃』(Una pistola per Ringo日本未公開)の続編である。なので、本作には1ドル銀貨は出てこない。

 南北戦争が終わり、メキシコ国境の町にリンゴことモンゴメリー・ブラウン大尉(モンゴメリー・ウッド/ジュリアーノ・ジェンマ)が帰ってくる。すると、平和だった町は見る影もなく変わっていた。町の近くの川で発見された砂金を目当てに、メキシコからフエンテス兄弟を頭とする一味が乗り込んできて、町を牛耳っていたのだ。なじみの宿屋の主人の助けで、髪を染め、肌の色を変えてインディオの農民に身をやつしたリンゴは、花屋“忘れな草”(マヌエル・ヌニス)の下で働きながら町の様子をうかがう。ブラウン家の屋敷はフエンテス一味のものとなり、愛妻ハリー(ロレッラ・デ・ルーカ)はフエンテス兄弟の弟パコ(ジョージ・マーティン)から求婚されていた。懐かしい屋敷に忍び込んだところを見つかって、利き腕の右手を切られて銃が持てなくなったリンゴは、一度はハリーと娘を連れて町を逃げ出そうとするが、ハリーの“町の人々はあなたが助けに帰ってくるのを待っていた”という言葉と、酒場の女ロシータ(ニエベス・ナバロ)の“希望のない者は恐れない。恐れを感じるのは希望があるから”という言葉に、一味と対決することを決意する…。

 ジュリアーノ・ジェンマは1938年ローマ生まれ。幼い頃から俳優を志し、ボクシングや体操などのスポーツで体を鍛え、まずはスタントマンとして映画界に。当時のイタリアはチネチッタ撮影所で歴史スペクタクル映画を量産していた頃で、ジェンマもウィアム・ワイラーの『ベン・ハー』に端役で出演したりしていたところを、ドゥッチオ・テッサリ監督に見いだされ、テッサリの初監督作品『タイタンの逆襲』で初主演。続いて『アンジェリク』など歴史物の二枚目役をへて、おりから勃興してきたマカロニ・ウェスタンに転身し、テッサリの『リンゴの拳銃』に主演。なんとこの65年には、『リンゴの拳銃』、『荒野の1ドル銀貨』、『続・荒野の1ドル銀貨』を含めた6本もの西部劇に主演し、たちまち人気者になった。残酷で汚い印象のあるマカロニ・ウェスタンだが、白い歯が光る、爽やか系ハンサムのジェンマは女性ファンが多く、当時日本ではBB(ブジジット・バルドー)、CC(クラウディア・カルディナーレ)と並んでGGと略称で呼ばれるほど絶大な人気があった。晩年までテレビなどで活躍していたが、2013年、75歳で惜しくも自動車事故で世を去った。

 見どころは、もちろん利き腕を切られたリンゴが、町を救うためにフエンテス一味との対決に立ち上がるクライマックスだが、この映画は、早撮りのマカロニ・ウェスタンには珍しく、悪役フエンテス兄弟、保安官、花屋といった脇役のキャラクターがよく描きこまれていて、重層的な味わいがある。これは脚本家出身のテッサリの腕だろう。特に、奔放な酒場の女ロシータと清楚な人妻ハリーという対照的な2人の美女がいい。ちなみにハリーを演じたロレッラ・デ・ルーカは、のちにテッサリと結婚した。また、この映画の翌年、テッサリは、同じキャストをそっくりそのまま使って『キスキス・バンバン』というスパイ映画のパロディを撮っているのだから、イタリアの職人監督はあなどれない。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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