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映画の処方箋

何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
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『ホワイトハウス・ダウン』2016/06/17 UP 放送日時

軽いフットワークが魅力の笑えるパニック・アクション

 『ホワイトハウス・ダウン』はテロ集団に占拠されたホワイトハウスを舞台にしたパニック・アクション。監督は『インデペンデンス・デイ』を大ヒットさせたローランド・エメリッヒで、コミックブックを読むような面白さがある。

 主人公は下院議長の警護官ジョン・ケイル(チャニング・テイタム)。彼には別れた妻との間にエミリー(ジョーイ・キング)という11歳の娘がおり、ソイヤー大統領(ジェイミー・フォックス)の大ファンである娘のために、大統領警護官の面接を受けることにし、ついでに娘にもホワイトハウスの入館パスを手に入れてやる。面接は、次席警護官キャロル(マギー・ギレンホール)に大学卒業資格がないことと性格の欠点を指摘されてあえなく失敗。気を取り直して娘を連れてホワイトハウスの見学ツアーに参加する。その頃、議会議事堂が何者かに爆破され、主席警護官マーティン・ウォーカー(ジェームス・ウッズ)がホワイトハウスを封鎖するよう命じる。そこにウォーカーの手引きで音響の修理工に化けて侵入していたステンツ(ジェイソン・クラーク)率いるテロ集団が現れ、警備員を次々に射殺してホワイトハウスを制圧する。ツアー客と共に館内に残されていたジョンは、娘と大統領を助けるため、たった一人でテロリストに立ち向かうことになる。

 映画が始まってすぐ気づくのは『ダイ・ハード』との類似点だろう。テロリストが人質をとって乗っ取った場所に偶然居合わせたヒーローが、たった一人で敵と戦うという設定がそのまんまパクリと言ってもいいくらい似ている。けれども、さすが著作権にうるさいハリウッドだけあって、似ているのはそこまで。何しろブルース・ウィリスと違って主演がチャニング・テイタムなので、策を弄したり、知恵と知恵を戦わせたりといった面倒なことは一切なく、走り出したら止まらないジェットコースターそのまま、一気にクライマックスへ突っ走る。笑える小ネタも満載で、同じ年に公開された、アントワン・フークア監督ジェラルド・バトラー主演の『エンド・オブ・ホワイトハウス』と違い、明るさと軽さが際立っている。この辺は好き嫌いが分かれるだろうが、私は大好きだ。

 監督は『インデペンデンス・デイ』でもホワイトハウスを(一部)壊した前科のあるローランド・エメリッヒ。『インデペンデンス・デイ』も『ホワイトハウス・ダウン』も、アメリカの愛国心に訴える明快なメッセージを持っていて、そこにいかにもドイツ人らしい彼の批判精神を感じる。大統領にジェイミー・フォックスをキャスティングしたのも普通のアメリカ人監督には思いつかない着想だ。ジェイミーの最初の台詞の大仰さ(私は自由世界のリーダー云々)には大笑いしたが、アメリカの映画館でも大爆笑だったに違いない。エメリッヒは映画を娯楽だと割り切り、深刻にならずに楽しめるように作っている真のプロフェッショナルである。

 脚本は監督作『ニュースの真相』が8月に日本公開されるジェームズ・ヴァンダービルト。アクション中心のこの映画だが、リンカーンの懐中時計やスマートフォン、ポケベルといった小物をうまく伏線に使っているところなどはさすがだ。

 主演は、コーエン兄弟の『ヘイル、シーザー!』で見事なタップダンスを披露したチャニング・テイタム。元アメフト選手だけあって、動きがキビキビしていて気持ちがいい。大統領役のジェイミー・フォックスはスタンダップ・コメディアン出身で、『Ray/レイ』で黒人として3人目のアカデミー主演男優賞を獲得。マギー・ギレンホールは『ナイトクローラー』のジェイク・ギレンホールの姉で、クリストファー・ノーラン版「バットマン」でヒロインを演じた。テロ集団のリーダーを演じたジェイソン・クラークはオーストラリア出身で、『猿の惑星:新世紀』、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』、『エベレスト3D』と、主演または主演級の大活躍が続く。エミリー役のジョーイ・キングは99年7月30日生まれで、4歳のときから子役として活躍。『オズ はじまりの戦い』では陶器の少女の声を演じていた。エメリッヒの最新作『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』にも出演している。

 さて、映画の最大の見どころといえばアメリカの権威の象徴ホワイトハウスだろう。冒頭ソイヤー大統領が専用ヘリ"ハミングバード"でホワイトハウスに戻ってくる場面のワシントンの景色(一部CG)も美しいが、細部まで正確に再現されたホワイトハウス(もちろん最高機密の部分はフィクション)が次々に破壊されていくところは爽快である。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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