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映画の処方箋

何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
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『ファイナル・デスティネーション』2015/01/16 UP 放送日時

飛行機に乗る前に絶対に見てはいけない映画

 この年末年始を海外で過ごした人も多かったと思う。私もその一人で、往復の機内で何本か新作や旧作の映画を楽しんだ。そのとき、作品のラインアップに『エア・フォース・ワン』と『フライト・プラン』が入っているので、おやと思った。通常、機内で上映する映画は、飛行機事故が出て来る作品を避けるはずで、2本とも飛行機は墜ちないものの、かなり危ない場面が出て来る。このくらいは許容範囲になったのだろうかと思ったのだ。しかし、いくら許容範囲が広がっても、絶対に機内で上映されないだろう映画がある。それが『ファイナル・デスティネーション』だ。

 主人公は17歳の高校生アレックス(デヴォン・サワ)。クラスメートら40人とパリへ修学旅行に行くことになり、意気揚々とパリ行の飛行機に搭乗する。ところが離陸して間もなく機内で火災が起こり、爆発炎上…、が、それは夢だった。目覚めるとまだ離陸直前の機内にいると知ったアレックスは、“この飛行機は墜落する!”と叫び出し、親友のトッド(チャド・ドネッラ)やクレア(アリ・ラーター)、引率のルートン先生(クリステン・クローク)ら6人と共に飛行機を降ろされてしまう。彼らを残して飛び立った飛行機は、夢の通りに爆発、墜落する。その1か月後、犠牲者の追悼式が行われた日の夜、トッドが浴室で謎の死をとげる。死の真相を知ろうと葬儀所に忍び込んだアレックスは、葬儀屋から“死の筋書きをいじると死神を怒らせるぞ”と警告を受ける。そして、テリー(アマンダ・デトマー)もバスに轢かれて死ぬ。テレビのニュースで事故の原因が燃料ラインの爆発だと知ったアレックスは、7人が爆発の起きた順に死んでいることに気づく…。

 題名の“ファイナル・デスティネーション”とは“最終目的地”という意味。アレックスら7人は、飛行機を降りて死の運命をいったん逃れるが、それはまだ“経由地”で、最終目的地(死)ではない、ということ。アレックスが死の筋書きに気づいたところ(ルートン先生の死)から、映画は俄然ホラー色を増し、どんどん恐くなっていく。

 この映画のヒントになったのは1996年に起こったトランスワールド航空800便の墜落事故で、映画の中にもニュース映像として登場する。ニューヨークのジョン・F・ケネディ空港からパリのシャルル・ド・ゴール空港を目指して飛び立ったボーイング747-100型機が電気配線のショートが燃料に引火して爆破し、ロングアイランド沖に墜落、230名の乗員乗客が全員死亡した。映画がアメリカ公開された2000年は、まだ事故の記憶も生々しかったろうし(2001年にすべての航空機事故がリセットされるような大事件が起こる)、よほどの飛行機好きでない限り、誰でも1度は“もし自分の乗った飛行機が事故に遭ったら”と思うことがあるだろう。そんな不安をうまく映画に取り入れた異色のホラー映画『ファイナル・デスティネーション』はスマッシュ・ヒットとなり、2011年の『ファイナル・デッドブリッジ』までシリーズ5作が作られることになった。

 監督のジェームズ・ウォンは元々脚本家で、2006年のシリーズ第3作『ファイナル・デッドコースター』の脚本・監督を務めた他、『Xファイル』、『イベント』、『アメリカン・ホラー・ストーリー』などのTVシリーズの脚本・制作を手掛けている。主演のデヴォン・サワは子役出身で、最近ではTVシリーズ『NIKITA/ニキータ』に出演。アリ・ラーターは続編の『デッドコースター』に同じクレア役で出演した後、『HEROES/ヒーローズ』や、ショーン・ビーン主演の『Legends』などのTVシリーズに出演している。

 昨年は2度のマレーシア航空機3事故、年末のエアアジア機事故と、大きな事故の多い年だった。飛行機事故のニュースを耳にすると、ついつい思い出すのが私にとっては『ファイナル・デスティネーション』なのである。飛行機に乗る前は絶対にお薦めしないが、見れば二度と忘れられなくなる、恐い映画だ。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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