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映画の処方箋

何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
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『PARKER/パーカー』2014/06/06 UP 放送日時

プロの職人芸が光る、本格犯罪サスペンス映画。

“仕事は完璧に、無駄な殺しはせず、落とし前はきっちり”。『PARKER/パーカー』は、自分に課した掟を律儀に守る、非情なプロの犯罪者パーカーが、自分を裏切った仲間たちに復讐するまでを描いた犯罪サスペンス映画だ。

原作はエドガー賞を3度受賞したベストセラー作家ドナルド・E・ウェストレイクがリチャード・スターク名義で書いた“悪党パーカー”シリーズの<地獄の分け前>。シリーズはこれまで何度も映画化されており、リー・マーヴィン、ロバート・デュバル、メル・ギブソンら、タフで強面の男臭い俳優が悪党パーカーを演じてきた。今回は水泳の飛び込み選手からモデルを経て映画界に進出、『トランスポーター』、『エクスペンダブルズ』などのスリムで動きのいい(しかし髪の毛は薄い)ジェイソン・ステイサム。共演は世界の歌姫ジェニファー・ロペス。テレビの<ザ・シールド>シリーズや『ファンタスティック・フォー』の岩男ガンロックのマイケル・チクリス、『ブルージャスミン』のボビー・カナヴェイルらが脇を固める。他に名優ニック・ノルティや、ブロードウェイ・ミュージカルの名女優パティ・ルポーンが友情出演。

では、ざっとあらすじを。愛妻クレア(エマ・ブース)の父で旧友ハーレー(ニック・ノルティ)の持ち込んだ話にのって、メランダー(マイケル・チクリス)ら新顔の仲間4人とオハイオ州のステート・フェアの売上金を強奪したパーカー。だが、4人組は奪った金を元手に、さらなる強盗をもくろんでおり、話にのらないパーカーを撃って逃走する。運よく通りかかった農家のトラックに助けられたパーカーは、最後に耳にした強盗計画から4人組の行方を割り出し、落とし前をつけるためにフロリダ州パームビーチへ。そこで高級物件を扱う不動産屋レスリー(ジェニファー・ロペス)に会い、4人組の隠れ家を割り出すが…。

映画の見どころは何といっても名匠テイラー・ハックフォードの職人芸。その見事な演出力は、牧師に扮した(髪の毛があるので一瞬誰だかわからない)ジェイソン・ステイサムが現れるオープニングから、ステート・フェアのさまざまな催しを見せつつ、売上金を奪って逃走するまでを一気呵成に見せる最初の強盗場面から発揮されている。ハックフォードといえば1983年アカデミー賞2部門受賞の『愛と青春の旅立ち』だが、当時はリチャード・ギアのファンでもなく、映画にあまり感心しなかった私は(まず“愛と青春の…”という題名がイヤ)、その後、ほとんど興味を持てずに来た。彼を見直すきっかけになったのは、ジェイミー・フォックスがアカデミー主演男優賞を受賞した『Ray/レイ』あたりから。彼のフィルモグラフィーを調べてみると、音楽を中心にした、ある種のテイストがはっきり見てとれるし、奥さんが私の大好きなヘレン・ミレンだと知ったことも大きい(あんないい女が惚れるなら、きっといい男に違いない、と)。

さすがベテランと思うのは、描くべき部分と省略すべき部分を心得て、テンポよく終盤まで引っ張っていくところ。脇役のキャラの立て方がよく、隅々まで気を抜いていないところ。全体をB級テイストに仕上げているところだろうか。パーカーは裏切った者にも助けてくれた者にもきっちりペイバックする律儀な男だが、ハックフォードの演出も彼に劣らずきっちりしている。ミステリー小説業界では、よく古典的名作を指して“本格”という言葉が使われるが、『PARKER/パーカー』などは、さしずめ本格B級犯罪サスペンス映画と呼ぶべき作品かもしれない。銃撃戦やカーチェースで、ど派手に盛り上げない、玄人好みのアクション映画である。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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