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何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
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『コンタクト』2014/03/28 UP 放送日時

地球外知的生命体とのコンタクトを描く、深くて楽しいエンターテインメント

『コンタクト』は天文学者でSF作家でもあるカール・セーガンの原作を、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『フォレスト・ガンプ/一期一会』で知られるロバート・ゼメキスが監督した異色SF映画だ。地球外知的生命体(いわゆる宇宙人)との接近遭遇を描いた映画といえば、何と言ってもスピルバーグの『未知との遭遇』やメルヘンタッチの『E.T.』だが、セーガンは専門家だけあって、ああいったウソっぽい宇宙人像とは一線を画し、もし宇宙に知的生命体があるとしたら、どうやって人間とコンタクトをとるだろうかを科学的に考え、限りなく真実味のあるフィクションとして再現してみせたのが『コンタクト』である。

とはいえ、難しいところは1つもない。さすが数多くのSF小説や科学書を通じて一般の人にもわかりやすく科学を解説したセーガン博士である。そのうえ監督が『フォレスト・ガンプ/一期一会』のように哲学的なテーマを笑える娯楽映画にしてしまう名人ゼメキスだけあって、誰にでも楽しめるエンターテインメントに仕上がっている。

主人公は若き天文学者エリー(ジョディ・フォスター)。幼い頃から父(デヴィッド・モース)の手ほどきで宇宙への興味を育んできた彼女は、SETI(地球外知的生命体探査)プロジェクトの研究員として、プエルトリコのアレシボ天文台に赴任する。財団の会長に就任したばかりのドラムリン(トム・スケリット)のインタビューに来たパーマー(マシュー・マコノヒー)との淡い恋もつかの間、ドラムリンは実益をもたらさないとの理由でSETIの予算を切ってしまう。エリーは同僚のケント(ウィリアム・フィクトナー)の意見を聞き入れ、独自にチームを作り、大富豪ハデン(ジョン・ハート)から資金援助を受けて、ニューメキシコ州の電波天文台で探査を続ける。そして4年後、レーダーが琴座の恒星ヴェガから飛んできた謎の電波をキャッチする。この電波の解析によって、エリーたちの純粋な宇宙研究は、政治・社会・宗教を巻き込んだ大騒動に発展していく…。

俳優はすべて適材適所。ひたむきな科学者のジョディ・フォスターは、まさにはまり役。アレシボに赴任したばかりの初々しさなど、相手役のマシュー・マコノヒーより7歳も上とは思えないほど。もちろん若きマシューの演技も見逃せない。彼にとって『コンタクト』はジョン・グリシャムの後押しで主役に抜擢された『評決のとき』の翌年の作品で、まだ20代後半。頬もふっくらとして、今のような渋い男臭さはないが、それでも単なる二枚目ではなく、牧師にならずに世俗にとどまった神学者という風変わりな役柄がよく似合う。マシューは授賞式のスピーチで、自分のヒーローは10年後の自分だと語っていたが、『コンタクト』の頃は、まさか17年後の自分が過激ダイエットでエイズ患者を演じてアカデミー賞を獲るなんて夢にも思わなかったに違いない。他に、相変わらず敵役の巧いジェームズ・ウッズ、トム・スケリット、今回は善人デヴィッド・モース、ご贔屓ジョン・ハートの怪演も嬉しい。

地球から太陽系へ、銀河系から遙か宇宙の彼方へと引いていったカメラが、ついにはエリーの瞳の中から出て来るという、空間のスケールを魔法のように変えてみせたオープニングが素晴らしい。この場面に映画のすべてがあると言ってもいい。また、公開時には物足りなく思えたラストも、今改めて見ると、よく考えられた、いかにも科学的なエンディングだと納得する。さて、本当に宇宙には人間の他に知的生命体がいるのだろうか。『コンタクト』の中に次のような答がある。“もし我々だけなら、空間がもったいない”(If it’s just us, it seems like an awful waste of space.)。

残念ながらカール・セーガンは映画の公開を待たずに亡くなったが(本人の出演場面も用意されていたが、間に合わなかった)、博士も映画の出来にはきっと満足しただろう。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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