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『第86回アカデミー賞の行方』2014/01/31 UP 放送日時

今年のアカデミー賞の行方を占う

いよいよ3月2日(日本時間3日)に発表される第86回アカデミー賞。今年はどんな作品やスターが注目を集めるのか、発表されたノミネートのラインナップから賞の行方を占ってみよう。

今年最多ノミネートを獲得した作品は、デヴィッド・O・ラッセル監督の『アメリカン・ハッスル』とアルフォンソ・キュアロン監督の『ゼロ・グラビティ』で10部門、続いてスティーヴ・マックィーン監督の『それでも夜は明ける』の9部門だった。

まず作品賞は『アメリカン・ハッスル』、『キャプテン・フィリップス』、『ダラス・バイヤーズクラブ』、『ゼロ・グラビティ』、『her/世界でひとつの彼女』、『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』『あなたを抱きしめるまで』、『それでも夜は明ける』、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』の9本がノミネート。最も賞に近いのは、1970年代末に実際にあった詐欺事件を映画化したコメディタッチの『アメリカン・ハッスル』で、対抗は自由の身でありながら奴隷に売られた黒人の過酷な運命を描いた『それでも夜は明ける』。個人的には、まだこんな切り口があったのかと大いに驚かせてもらったアルフォンソ・キュアロンの『ゼロ・グラビティ』を押したいが、技術賞は取れても主要部門に入るのは無理かもしれない。

監督賞はデヴィッド・O・ラッセル、アルフォンソ・キュアロン、アレクサンダー・ペイン、スティーヴ・マックィーン、マーティン・スコセッシの5人。ここは作品の力と業界への貢献度からラッセルで決まり(のはず)。スティーヴ・マックィーンはイギリス人だし、ビジュアルアートから映画監督へ転身して3作目とまだ新参者だ。演出力ならスコセッシだが、キャリアが凄すぎるので、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』くらい簡単に撮れると思われてしまうかも。

主演男優賞はクリスチャン・ベール、ブルース・ダーン、レオナルド・ディカプリオ、キウェテル・イジョフォー、マシュー・マコノヒーの5人。注目はレオ様3度目のノミネートにして悲願の初受賞なるか。だが、デブでハゲの詐欺師を体重を増やして演じたクリスチャン・ベールと、20キロあまりダイエットしてエイズ患者を演じたマシュー・マコノヒーの体重の増減対決もあり。ただ、太るのは簡単だろうと思われやすく(その後のダイエットのことは忘れられがち)、マコノヒーは出番が短いながら『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でも強烈な印象を残しており、初ノミネートであっさり受賞となるかも。個人的には伝説のバイプレーヤー、ブルース・ダーンにあげたい。

主演女優賞はエイミー・アダムス、ケイト・ブランシェット、サンドラ・ブロック、ジュディ・デンチ、メリル・ストリープの5人。本命はウッディ・アレンの『ブルージャスミン』で、離婚してすべてを失い、精神が不安定になっていくヒロインを演じたケイト・ブランシェット。対抗は『アメリカン・ハッスル』で詐欺師の愛人を体当たりで演じたエイミー・アダムス。

助演男優賞はバーカッド・アブディ、ブラッドリー・クーパー、マイケル・ファスベンダー、ジョナ・ヒル、ジャレッド・レトの5人。ハンデのある役が有利という説に従い、ゲイのエイズ患者を演じたジャレッド・レトが本命、役が主演と同じくらい大きいブラッドリー・クーパーが対抗だ。

助演女優賞はサリー・ホーキンス、ジェニファー・ローレンス、ルピタ・ニョンゴ、ジュリア・ロバーツ、ジューン・スキッブの5人。本命は、あまりの上手さに舌を巻いたジェニファー・ローレンスだ(『世界にひとつのプレイブック』の演技よりずっとよかった)が、まだ若いし、昨年主演女優賞を取っているのがネックとなるかも。

さて、授賞式まであと1ヶ月。ロバート・レッドフォードが主演作『オール・イズ・ロスト』が音響編集賞にしかノミネートされなかったことを“投票はどれだけキャンペーンをはったかに左右される”と発言したことにも一理ある。願わくばアカデミー会員が雑音に左右されず、正しく自分の目で見て評価した作品に投票しますように。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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