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映画の処方箋

何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
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『ピラニア』2013/08/02 UP 放送日時

猛暑にぴったりなモンスター・パニック映画

地球上のありとあらゆる薄気味悪い生物はモンスター・パニック映画のネタになりえる。例えば『ジョーズ』のサメ、『アナコンダ』のヘビ、『アラクノフォビア』のクモ、『黒い絨毯』のアリなどなど。とにかく気味が悪くて、人を襲うものであれば、ほとんど何でも可(毒があればさらに可)だから、アマゾン川の肉食魚ピラニアなどは映画屋にとっては格好の飯のタネとなる。

2010年にアレクサンドル・アジャが3D化した『ピラニア』の源流をたどると、1978年にジョー・ダンテが監督した『ピラニア』に行きつく。この映画は製作総指揮がB級映画の帝王ロジャー・コーマン(プロデューサーのチャコ・ヴァン・リューウェンは元日活女優の筑波久子)なので、当然のことながら低予算だが、そこはジョー・ダンテ、脚本にジョン・セイルズを得て、金のないところを知恵で補い、『ジョーズ』の焼き直しとは思えないほどオリジナルなパニック映画に仕上げている。この映画のヒットで『殺人魚フライング・キラー』、『ザ・ピラニア/殺戮生命体』という2本のリメイクが作られていて、つまりアジャの『ピラニア』は3度目のリメイクということになる(ちなみに、このアジャ版もリメイクされている。それが『ピラニア・リターンズ』で、生き残ったキャストのうち、クリストファー・ロイドのみ再登場した)。

舞台はアリゾナ州のどこかにあるヴィクトリア湖。湖畔では春休み(ハーモニー・コリンの『スプリング・ブレイカーズ』で有名になった、あのスプリング・ブレイク)を楽しむ大学生たちが乱稚気騒ぎを繰り広げている。女性保安官ジュリー(エリザベス・シュー)は同僚のファロン(ヴィング・レイムス)と、湖で行方不明になったマット(リチャード・ドレイファス)の捜査に。実はマットは釣りの最中に地震が起こり、巨大な渦と共に現れたピラニアの群れに襲われたのだった。ジュリーの高校生の息子ジェイク(スティーヴン・R・マックィーン)は青春まっさかり。ポルノ映画の撮影隊に誘われて湖を案内することになる。秘かに思いを寄せるケリー(ジェシカ・ゾー)も撮影に加わり、水着の女優たちを乗せた大型ボートで意気揚々と湖に乗り出すのだが…。

監督のアレクサンドル・アジャは1978年生まれの35歳。父は『流血の絆』(フランス版『ゴッド・ファーザー』)で知られる映画監督のアレクサンドル・アルカディで、新世代のバイオレント映画の作り手“スプラット・パック”の一員とも言われている。この映画は、エロ・グロ・ナンセンスというB級映画の3本柱にのっとり、裸がどんどん登場し、どんどんピラニアに食われる(劇場公開時はR15指定)。残酷描写は、さすがスプラット・パックだが、CGで作られたピラニアが何とも凶暴な顔をしているのが可笑しい。

ダンテ版はコーマン製B級映画だったが、アジャ版はワインスタイン兄弟製なので比べものにならないくらいお金がかかっている。CGも見事だし、キャストも、『ジョーズ』のリチャード・ドレイファス、『インビジブル』のエリザベス・シュー、『ドーン・オブ・ザ・デッド』のヴィング・レイムス、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のクリストファー・ロイドと豪華だ(ジェイク役のスティーヴン・R・マックィーンは、かのスティーヴ・マックィーンの孫)。脳が煮えるくらい暑い、猛夏に見るには最適の1本。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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