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映画の処方箋

何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
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『ナイト ミュージアム』2013/03/15 UP 放送日時

三世代のコメディアン共演で見せる博物館ファンタジー。

その昔、親に連れられて上野の博物館でエジプトのミイラを見たのが私にとっての博物館事始めだった。この春休みにも、各地の博物館で様々な世界の驚異を目にして思い出作りをする子供たちも多いかと思う。博物館の展示物は基本的には標本、つまりは“死体”なのだが、生命のないはずの展示物が真夜中に動き出したら?そんなファンタジーを最新技術で映画化したのが『ナイトミュージアム』である。

主人公は何をやっても失敗続きの夢想家ラリー(ベン・スティラー)。面白いアイデアを思いついては起業するが、どこかでヘマをして会社を潰し、数ヶ月おきに引っ越しを繰り返すはめになり、ついには住み慣れたマンハッタンからクィーンズへ都落ちの危機。このままでは愛する一人息子ニック(ジェイク・チェリー)の親権を別れた妻に取られてしまう。とにかく現金収入をと、なり手のいない自然史博物館の夜警を引き受けることに。博物館の経費削減でリストラされることになった前任の老警備員、セシル(ディック・ヴァン・ダイク)、ガス(ミッキー・ルーニー)、レジナルド(ビル・コッブス)から、鍵と懐中電灯と警備マニュアルを手渡されたラリーは、真夜中の博物館でとんでもない驚異を目にすることになる…。

クロアチアの児童書からアイデアを得て映画化を企画したプロデューサーは、『ハリー・ポッター』シリーズのクリス・コロンバスとマイケル・バーナサン。特にコロンバスは監督デビュー作の『ベビーシッター・アドベンチャー』から世界中で大ヒットした『ホーム・アローン』、『パーシー・ジャクソン』まで、一貫してファミリー向けの映画を手掛けている人だけに、子供と一緒に楽しめる映画作りを心得ている。

キャストも豪華だ。主人公ラリー役は、アメリカで絶大な人気を誇るコメディアンのベン・スティラー。ニューヨーク生まれで、両親ともに有名なコメディアン(スティラー&メアラという有名なコメディ・チーム)というサラブレッドだ。なぜか日本でそれほど人気が出ないのは、言葉と文化を笑いの基盤とする喜劇には、アクションやラブストーリーにはない、大きな国境のバリアがあるからだろう。ただ、『ナイトミュージアム』のような仕掛けの大きいコメディ映画の場合、話は別で、いつもは浮いて見える、ちょっとアクの強いスティラーのボディ・ランゲージが、恐竜の化石やジオラマのミニチュア人形と一緒だと、かえって自然に見えるのが可笑しい。

そして忘れてならないのは、セオドア・ルーズベルト大統領(の蝋人形)役を演じたロビン・ウィリアムズ、老警備員セシル役のディック・ヴァン・ダイク、ガス役のミッキー・ルーニーという世代の違うコメディアンたちの競演だ。ディック・ヴァン・ダイクといえば、テレビの『Dr.マーク・スローン』シリーズの彼を憶えている方もいるだろうが、映画ファンにとっては『メリー・ポピンズ』の“チム・チム・チェリー”を歌って踊った煙突掃除人や、『チキ・チキ・バン・バン』の空飛ぶ車の発明家として忘れられない人だし、ミッキー・ルーニーといえば、1940年代にジュディ・ガーランド(ライザ・ミネリの母)とのコンビで青春ミュージカル映画を次々にヒットさせた人だ。ベン・スティラーを入れた三世代のコメディアンが楽しそうに演じているというそれだけで、映画ファンは笑顔になってしまう。ちなみに、スティラーの実母アン・メアラが職業斡旋所の職員デビー役で、スティラーと10本以上の共演作があるオーウェン・ウィルソンが西部の開拓者ジュディダイア(のミニチュア人形)役で友情出演している(ノン・クレジット)。こんな共演者の親密さが、映画のアットホームな雰囲気作りに大いに役立っている。

監督は近作『リアル・スティール』でも絆を取り戻す父子を描いたショーン・レヴィで、現在『ナイトミュージアム3』を準備中とか。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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