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映画の処方箋

何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
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「ア・フュー・グッドメン」2013/01/18 UP 放送日時

若きトム・クルーズの魅力満載な法廷サスペンス

『ア・フュー・グッドメン』はアーロン・ソーキンの舞台劇をロブ・ライナーがトム・クルーズ主演で映画化した法廷サスペンス。20年前の作品だが、脂ののりきった頃のロブ・ライナーの演出の確かさとキャスティングの豪華さで、今見ても十分に面白いし、ある意味で今の方が楽しめるかもしれない。

キューバのグァンナタモ基地で殺人事件が起こり、キャフィー中尉(トム・クルーズ)が弁護人に指名される。彼はハーバード大学のロー・スクール卒の秀才だが、これまで担当する事件はすべて司法取引で済ませ、法廷に立ったことがない。そんな彼をサポートするのが、頼れる先輩ウェインバーグ大尉(ケヴィン・ポラック)と、内務調査部のギャロウェイ少佐(デミ・ムーア)である。映画は初めから真犯人を明かしてしまう。事件は、反抗的な兵士を制裁するための“コード・レッド”と呼ばれる命令が下されたことで起こり、真の黒幕は基地司令官のジェセップ大佐(ジャック・ニコルソン)である。キャフィーは、今回も司法取引で済ませようと考えていたが、ジェセップ大佐の高圧的な態度と、父親へのコンプレックスを捨てろというギャロウェイの説得によって、ついに法廷に立ち、ジェセップが体現する軍隊内部の不正と闘い、無罪を勝ち取ろうと決意する。

見どころは何と言っても若きトム・クルーズの魅力だろう。アーロン・ソーキンの舞台劇を知ったロブ・ライナーは、すぐにトム・クルーズ、デミ・ムーア、ジャック・ニコルソンで映画化を決意。ソーキンに映画用の脚本を依頼し、トム・クルーズに合わせた主人公のキャラクター作りを徹底的に行ったふしがある。“今はまだ真価を発揮していないが、仲間や恋人の助けであらゆる困難を乗り越え、見違えるように成長する青年”というのは、出世作『トップガン』以来、トム・クルーズが最も得意とするキャラである。しかも今回の舞台は海軍ということで、長袖半袖、夏用冬用、普段着、フォーマルと様々な軍服を着こなしてみせる。クルーズほど自己PRに長けたスターはいない。どうしたら最高の自分を見せられるかを心憎いほど知っている。

対するジャック・ニコルソンは、おそらくは自分がトム・クルーズの引き立て役であることを自覚して、いつもより2割増しのオーバーアクティングで敵役の司令官を憎々しげに演じている。その他、『24』のジャック・バウアーでブレイクする前のキーファー・サザーランド、『ザ・エージェント』のアメフト選手になる前のキューバ・グッディングJr、『ER』のカーター医師になる前のノア・ワイリーが出演している。

この映画の後、脚本のアーロン・ソーキンは、『ザ・ホワイトハウス』シリーズをヒットさせ、『ソーシャル・ネットワーク』でアカデミー脚色賞を受賞する。監督のロブ・ライナーは、『めぐり逢えたら』でトム・ハンクスに“ティラミス”を教えた後、『最高の人生の見つけ方』で再びジャック・ニコルソンと組み、世の人に“最も幸せな死に方”を教えてくれる。私はハリウッド映画の楽しさを心得たロブ・ライナーの演出をとても気に入っている。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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