知って得する!

映画の処方箋

何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
あなたに効くエピソードや解説を処方します!
用法用量を守って正しくお使いください。

099
「グリーンマイル」2012/12/21 UP 放送日時

追悼・愛すべき巨人マイケル・クラーク・ダンカン

2012年9月3日に、心臓発作で入院中だったマイケル・クラーク・ダンカンが亡くなった。フランク・ダラボン監督の『グリーンマイル』で、彼の演じた“繊細で純粋な心を持った巨人”ジョン・コフィーは、まさに彼を代表するはまり役となり、ゴールデングローブ賞とアカデミー賞の助演男優賞ノミネートをもたらした。マイケル・クラーク・ダンカンの魂を追悼するのに、彼の出世作にして、生と死の不思議を描いた『グリーンマイル』以上にぴったりの作品はないだろう。

題名の“グリーンマイル”とは死刑囚棟のこと。通常、死刑囚棟は“ラストマイル(最後の通路)”と呼ばれるが、ポール(トム・ハンクス)が看守主任を務めるコールドマウンテン刑務所では、床が褪せた緑色をしていたので“グリーンマイル”と呼ばれていた。そこには、ブルータル(乱暴者)という仇名に似合わぬ心優しい巨漢ブルータス(デヴィッド・モース)、若手のディーン(バリー・ペッパー)、知事の親戚であることを鼻にかける無能で残忍なパーシー(ダグ・ハッチソン)ら看守たちと、ミスター・ジングルスというネズミを飼育しているデル(マイケル・ジェッター)、札付きの問題児“ワイルド・ビル”(サム・ロックウェル)、ネイティブ・アメリカンの“チーフ”(グレアム・グリーン)ら死刑囚がいた。ある日、死刑囚棟に2mあまりの巨体を持つ黒人が送られてくる。その男、ジョン・コフィーは双子の少女をレイプして殺した凶悪犯だが、実際の彼は暗闇を怖がる子供のような心を持ち、不思議な力でポールの尿路感染症を触っただけで治してしまう。コフィーに興味を持ったポールは、彼が本当に殺人を犯したのか疑問を持つようになる。意地悪なパーシーに踏みつぶされたミスター・ジングルスをコフィーが生き返らせたのを見て、ポールは刑務所長(ジェームズ・クロムウェル)の妻メリンダ(パトリシア・クラークソン)の脳腫瘍を治せるのではないかと考え始めるが…。

スティーヴン・キングの原作は、死刑囚と看守の様々なエピソードを紡ぎ合わせながら、生と死のドラマを浮かびあがらせていく一種の偶像劇で、6巻本として刊行された大長編だった。映画化に当たっては多少の省略と時代設定の変更がなされたが、キング・ファンのダラボンらしい誠実で丁寧な演出で、3時間を超える長さを感じさせない。

マイケル・クラーク・ダンカンは1957年11月10日、シカゴ生まれ。多くの黒人家庭がそうであるように母の手ひとつで育てられ、家計を助けるために早くから働き始めた。俳優を志してハリウッドに行き、ウィル・スミスなどのボディガードをしながら小さな役を得ては映画出演、『アルマゲドン』のベアー役で注目を集めた。コフィー役のキャスティングに難航していたダラボンに彼を推薦したのは、『アルマゲドン』で共演し、友人となったブルース・ウィリスだった。身長1m96の巨漢だが、笑顔が可愛い、ジョン・コフィーそのままの無邪気で温かい人だったという。彼の訃報を聞いたときに、彼がトム・ハンクスに不思議な力を授ける場面を連想した人は多かったろう。もし、あの力があれば心臓発作を乗り越えられたかもしれない。享年54歳の早すぎる死だった。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

メルマガ限定コラムもチェック!

ここでしか読めないコラムを毎月お届け。

最新のコラム

コラム一覧

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年