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映画の処方箋

何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
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「アナコンダ」2012/07/20 UP 放送日時

そんなバカな!超絶進化をとげた巨大ヘビ伝説。

アナコンダとは体長10mにもなる世界最大のヘビである。主として南米の熱帯雨林に生息し、気性が荒いことで有名だという。でかくて、不気味で、肉食なら、世界中のありとあらゆる動植物を怪物映画の主役に仕立ててきた映画界が、これに目をつけないわけがない。こうして1997年に初代『アナコンダ』が誕生した。

1作目のストーリーは、南米の未開部族の取材に来た撮影隊が、アナコンダの捕獲に執念を燃やすハンターを助けたことが仇になり、アナコンダが待ち受ける危険な支流へと導かれる、というもの。配役は主人公の映画監督にジェニファー・ロペス、人類学者で彼女のボーイフレンドにエリック・ストルツ、カメラマンにアイス・キューブ、アナコンダのハンターにジョン・ヴォイトと豪華。監督はペルー出身のルイス・ロサだ(ノーベル賞作家バルガス・リョサの従弟なので、本当はリョサが正しい)。

怪物&怪獣映画の元祖は1933年にメリアン・C・クーパーとアーネスト・B・シュードサックが共同監督した『キングコング』である。南海の孤島を訪れた映画の撮影隊が、原住民が崇める怪獣に遭遇、生け贄にされそうになったヒロインを餌にコングを捕獲し、ニューヨークに連れ帰るが…、というストーリーは、その後の怪獣映画の手本となった。『アナコンダ』も例外ではなく、このストーリーをほぼ踏襲。ただ、ジェニファー・ロペスのための企画なので、エリック・ストルツは脇役に回り、ジェニファー・ロペスがヒロインとヒーローを兼ねてアナコンダと悪役ジョン・ヴォイトを相手に大活躍する。アマゾンの密林が舞台なのでアドベンチャー映画としての条件も満たしているし、デビュー間もないオーウェン・ウィルソンが端役で出演しているのもファン必見だ(もちろんアナコンダに食われる方の役)。

7年後の2004年に製作された続編『アナコンダ2』は、第1作同様、アドベンチャー映画を兼ねたパニック映画が基本ジャンル。キャストに有名スターはいないものの、前作よりぐっと若返り、監督も『プリズン・ブレーク』や『ボーンズ』といったTVシリーズで活躍するドワイト・リトルに。舞台はなぜか南米からボルネオに変わる(ロケ地は明らかにハワイ諸島)。ここで、南米にいるはずのアナコンダがアジアにもいるのかという当然の疑問が出るはずだが、映画はそこには深入りせず、代わりにヘビを巨大化させた謎の蘭ブラッド・オーキッドを登場させる。その蘭を採取し、新薬の開発で大金持ちになろうとする野心的な学者によって探検隊は危険なアナコンダの巣へと導かれる。

3作目でアナコンダは劇的進化を遂げる。『アナコンダ3』に至る4年の間に“遺伝子操作によって新種に脱皮した”と言ってもいいだろう。舞台はアメリカで、南米でもボルネオでも、熱帯雨林でさえない(つまり、映画としてもアドベンチャーからスプラッターホラーへと脱皮したのだ)。アナコンダは製薬会社の実験で不死の蘭ブラッド・オーキッドのエキスを与えられ、大きさも凶暴性も増したハイブリッドとなり、研究室から逃げ出して人を殺しまくる。

『アナコンダ4』は『アナコンダ3』の続編で、東欧の森の中にアナコンダが生息していると知った薬学者アマンダ(クリスタル・アレン)と、癌の特効薬を開発させている億万長者マードック会長(ジョン・リス=デイヴィス)の雇った賞金稼ぎの一団とアナコンダが殺し合う。

3と4の監督は撮影監督出身のドン・E・フォントルロイで、監督と撮影を兼ねている。配役もぐっと軽めで、有名スターは『ロード・オブ・ザ・リング』のギムリ役で知られるジョン・リス=デイヴィスくらい。3と4を通して主役を演じたクリスタル・アレンのピチピチしたお色気は、この種の映画に不可欠だ。

“いくらアナコンダとはいえ、所詮はヘビなんだから動きはのろいし、いったん獲物を呑み込んだら消化が終わるまでじっとしてるから、捕獲は簡単なのでは?”と思ったら大間違い。進化したアナコンダは蛇行なんてまだるっこしいことはしない。自動車より速く走るし、飲み込んだ獲物(人間)を吐き出してまで襲いかかってくる。無敵である。“そんなバカな!”と思うだろう。けれども“そんなバカな!”こそ、B級映画にとって最高の誉め言葉なのである。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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