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映画の処方箋

何気なく観ていたアノ映画も、知れば「なるほど!」映画評論家 斎藤敦子が
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『フォー・ウェディング』2010/02/05 UP 放送日時

永遠の愛すべきダメ男、ヒュー・グラントに乾杯!

2月は1年で最も寒い季節である。3月になれば、公園の木々が芽吹き始めるだろうし、散歩に行く気もするが、2月はまだテレビの前でぬくぬく過ごした方がいい。巣ごもりの季節だし、バレンタインというイベントもある。一人よりは二人の方がもっといい。そんなときに雰囲気を盛り上げてくれるといったらこの映画が一番だ。
 
原題は“4回の結婚式と1回の葬式”といい、脚本のリチャード・カーティスが、11年間に65回もの結婚式に出席したという実体験が元になっている。カーティスはオックスフォード大学出身で、同窓のローワン・アトキンソンと、テレビ&映画で世界中で大ヒットした“ミスター・ビーン”シリーズを作った名脚本家。ユーモアとウィットに富んでいるから、ヒュー・グラントとアンディ・マクダウェルのロマンスに、笑いをたっぷりまぶし、ほろ苦いペーソスをちょっぴり隠し味に加えてある。さて、4度の結婚式と1度の葬式はこんな風に行われる。
 
一度目の結婚式:他人の結婚式に出席してばかりで、自分はなかなか結婚できない、シャイなチャールズは(ヒュー・グラント)は、付添人を務めたアンガスとローラの結婚式で、美しいアメリカ人キャリー(アンディ・マクダウェル)を見初める。その夜、彼女と結ばれるが、ちょっとした言葉の行き違いがあり、翌朝、彼女はアメリカに戻ってしまう。二度目の結婚式:バーナードとリディアの式で、チャールズはキャリーに再会するが、彼女は別人と婚約していた。よりを戻せるかとの期待もむなしく終わる(何しろ、彼女に“愛してる”と言う代わりに、デヴィッド・キャシディとパートリッジ・ファミリーのヒット曲“I think I love you”(邦題は“悲しき初恋”)を持ち出すほどの口べたである)。三度目の結婚式:キャリーはスコットランド人の政治家ヘイミッシュと結婚。チャールズはもちろん遅刻。結婚式の最中に突然、ガレス(サイモン・カーロウ)が倒れて亡くなる。1度の葬式:パートナーだったマシュー(ジョン・ハナー)が弔辞を述べる。雨模様の寒々とした空の下、チャールズは、結婚と真実の愛は両立しないかもしれないと思い始める。四度目の結婚式:チャールズは、フィオナが“アヒル顔”と仇名をつけて軽蔑するヘンリエッタ(アンナ・チャンセラー)との結婚を決意。けれども、式に現れたキャリーから、夫と離婚したと聞き、激しく動揺する。さて、彼はこのままヘンリエッタと結婚式を挙げてしまうのだろうか…。
 
独身貴族のチャールズは、“ハンサムで誠実だが、シャイでどこか頼りなげ”というヒュー・グラントが最も得意とする“愛すべきダメ男”。世界中で大ヒットした『ノッティングヒルの恋人』で彼が演じた、大スターと恋に落ちる本屋のウィリアム役も、まったく同じキャラだった。そんなヒューも今年9月で50歳。さすがに最新作の『噂のモーガン夫妻』では、アメリカ一凄腕な弁護士役で、これでやっとダメ男キャラ卒業かと思いきや、実は浮気がバレて、サラ・ジェシカ・パーカー演じる不動産女王の妻と何とかよりを戻そうとする男というのだから、ある意味では同じダメ男である。ヒューは永遠にダメ男キャラと離れられないのだろうか。それでも、ここが重要な点なのだが、彼の場合は単なるダメ男ではなくて、“愛すべき”がつくところがミソなのである。ハンサムで何一つ欠点のない立派な男より、ちょっと頼りなげに見える方が女心にグッと来るのだ。『フォー・ウェディング』には、そんなヒューの最高にチャーミングな時代の魅力が詰まっているうえ、おまけに素敵な英国式ウェディングの数々も楽しめる、何度見ても美味しく、見る度に違った美味しさの味わえる映画なのである。

斎藤敦子

ライター 斎藤敦子

映画評論家。パリで映画編集を学ぶ。フランス映画社宣伝部勤務を経てフリー。「サウルの息子」、「スポットライト 世紀のスクープ」などの字幕翻訳、「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫)「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。

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