吹替王国

#3 声優:玄田哲章

2015年10月某日、スタッフと軽い打ち合わせの後、ナレーションブースへ登場した玄田哲章さん。番宣CMを4バージョン制作。『ターミネーター2』編では、あの音楽「ダダン!ダンダダン!」の部分を「げげん!玄田だ!」とナレーション。「難しいなぁ!」とつぶやきながらも、迫力の美声で完璧な番宣CMに。

30年越し初対面!「100年やってくれ」

── 最初にシュワルツェネッガーの吹替えをされたのは、日曜洋画劇場の『コナン・ザ・グレート』(1982年)ですが、今後ずっと自分が彼の声をやるんだろうな、と予感していましたか?

「それはないですね。僕はすでに筋肉系のシルヴェスター・スタローンをやっていたので、その流れでオファーがあったんだなと受け取っていました。
最初は、シュワルツェネッガーは筋肉すごいけど、セリフが棒読みだし(笑)、この人は今後大丈夫かな?と思いました(笑)。『コマンドー』(1985年)の時でも、まだ彼が映画界でどうなっていくのか分からなかったので、僕にとっても未知の人でした。
吹替えを聞いた人が納得してくれたり、制作側が“玄田でいこう”という風になってくれれば、それはもうありがたいです。」

── 先日、シュワルツェネッガーと初対面された時はどんなお話をされたんですか?

「いやぁ、30年間やってきましたけど、こんな機会があるなんて夢のようでしたね。ものすごくオーラがありました。俳優としてだけでなく、人として魅力があるんだなと思いました。
吹替えている自分に対してどう思っているのかは怖くて聞いていませんが、「僕は長い間あなたの声をやってきて、これからも一生懸命やっていきたいと思っているんですが、どうでしょうか」と聞いたら、「俺の声を100年やってくれ!」と言われました(笑)。彼のユーモアに溢れた言葉がすごく嬉しかったです。
あと「毎日一時間のトレーニングを欠かさない。お前もトレーニングしろ。」と言われたので、「はい。」とお答えしましたけど(笑)、トレーニングしてるかどうかって肉体を見ればバレちゃうじゃないですか、シビアですよね。」

── 仕事をする上で、体のケアなどはされているんですか?

「やっぱり風邪はひきたくないよね。うがいや手洗いは意識してやっています。
声優はマイクの前で動かないけど、細胞や神経は役者と同じように感じないといけないんですよ。年齢を重ねれば当然動けなくなってくるわけですから、若い時よりももっと訓練しないとね。ただ無理しちゃうと肉体がダメになっちゃいますから、限度をちょっと超えるギリギリのことをやるのがちょうどいいんじゃないかな。
現役のオペラ歌手に10年以上歌の発声を習っているんだけど、声の出し方が普通の発声とは違って、自分の声が響くのは体のどこなのかとか勉強になります。これは意外にセリフをしゃべるときにも役立ちます。」

ジャッキー・チェン以前、ダスティン・ホフマン以降の声優のあり方

── ビデオ版とテレビ版では声優が違うことがありますが『コラテラル・ダメージ』(2002年)からは両方玄田さんですね。

「ビデオで先に観ていたら、テレビでも同じ声優だと観ないんじゃないかという考え方が以前あったんですが、このくらいの頃から、ビデオ版がテレビでもオンエアされるようになってきて、嬉しいですよね。」

── より「シュワルツェネッガーの声は玄田さん」というイメージが強くなってきますね。

「そうですね、でも現実は難しいですね。
ジャッキー・チェン以来、役者と声優が固定されるということは難しいんです。
ダスティン・ホフマンあたりの時代から、“性格俳優”が出てきて、『卒業』はこの声優、でもこの作品はまったく違うからこの声優の方が合うんじゃないか、という感じで、細分化されてきちゃったんですね。
あと、テレビ局によっても違う声優を使ったりします。一人に決めてしまうと、例えばその声優が事故で入院したりすると撮れなくなっちゃうじゃないですか。そういうこともあって、保険の意味で複数人でまわしていこうとか、そういった狙いもあったんじゃないかな。」

絶対に焦ったら損。遊びも回り道も芸の肥やし。

── これからも声優の仕事をずっと続けていきたいと思っていらっしゃいますか?

「長く使ってくれる人がいなきゃ仕事はできないわけです。今考えると、人生の分岐点で作品や人との良い出会いがあって、その分岐点を通過すると次の道ができている。ああ、あの時あの作品があったから今があるんだなと感じます。やっぱり運が良かったんだなと思いますよ。」

── 声優を目指して勉強している人たちにアドバイスをお願いします。

「デビューは遅くてもいいと思うんですよ。スターになるような人たちは、何もしなくても輝いているものです。だけど、そうじゃない人たちでも別に焦る必要はない。舞台などでじっくり芝居の勉強をしてから声優になったって構わないと思います。ひとりひとり違う魅力をを引き出せるようになるには色んな経験が必要だしね。遊びも無駄じゃないし、すべてが芸の肥やしになっているんだと思っています。もしもこの道でやっていきたいのであれば、遠回りでもなんでもして色んな道を通っていいじゃないかと思います。最終的にそこに行ければいいんだから、絶対に焦ったら損だよと言いたいですね。」

── 最後に、視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。

「今回ムービープラスで放送される作品はもちろん、これを機にコメディとか他のシュワルツェネッガー出演作も観ていただくと面白いと思います。僕も楽しんで演じているので、それが皆さんに伝わったら嬉しいです。楽しんでご覧いただければ幸いです」

プロフィール

玄田哲章(げんだてっしょう)

岡山県出身。アニメ、ナレーターなど様々な分野で活躍中。映画吹替えではアーノルド・シュワルツェネッガー(本人公認)、ローレンス・フィッシュバーン、『トランスフォーマー』シリーズ(オプティマス・プライム)、など多数。

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