映画の処方箋

Vol.188

『トゥー・ウィークス・ノーティス』

ハンサムなダメ男としっかり者の女性弁護士、正反対の二人が恋に落ちるまで。

 『トゥー・ウィークス・ノーティス』はヒュー・グラントとサンドラ・ブロックの共演でおくるロマンチック・コメディ。タイトルを直訳すると“2週間前の通告”となる。アメリカでは会社を辞めるときに2週間前に通告する義務があり、つまりは辞表のことである。あまりロマンチックとは言えない題名だが、サンドラ・ブロックが辞表を突きつける相手がヒュー・グラントとなれば話は別だ。

 舞台はバブル末期のニューヨーク。ルーシー・ケルソン(サンドラ・ブロック)はハーバードを優秀な成績で卒業した人権派の弁護士。生まれ育った街が再開発の波でどんどん変わっていくことを憂いている。ジョージ・ウェイド(ヒュー・グラント)は大手不動産会社の二代目社長。実は兄のハワード(デヴィッド・ヘイグ)が、ハンサムで人当たりのいい弟を会社の看板にして、裏で会社の実権を握っていた。美人弁護士のミスで臨海地区の買収が失敗に終わり、もっとまともな弁護士を雇えと兄に釘を刺されたジョージは、公民館の保存を陳情に来たルーシーを気に入り、顧問弁護士として雇うことにする。優秀なルーシーはたちまち弁護士兼私設秘書としてジョージにはなくてはならない存在になるが、朝から晩まで私用で呼び出されることにうんざりし、ついにジョージにトゥー・ウィークス・ノーティスを言い渡す。ところが、ハーバードの後輩で頭がよくてキュートなジューン(アリシア・ウィット)が後任に決まり、仕事の引継ぎをしているうちに、ルーシーとジョージは互いに失うものの大きさに気づき始める…。

 主演は、『フォー・ウェディング』と『ノッティングヒルの恋人』で英国製ロマコメのプリンスとなったヒュー・グラント。対するは、『あなたが寝ている間に…』でロマコメの才能を評価され、さらに自虐ネタ満載の『デンジャラス・ビューティー』でコメディエンヌとして一皮むけたサンドラ・ブロック。コメディ演技には自分を冷静に客観視できる才能が必要で、その点、オックスフォード大学出身のグラントと、有名オペラ歌手を母に持つブロックは、まさにうってつけ。自分の所有するホテルで独身生活を謳歌するお飾り社長ジョージと、色気も化粧っけもない有能な弁護士ルーシーの丁々発止のやりとりがとても楽しい。特に、公私に渡って社長の右腕となったルーシーがジョージとランチをとる場面で、お互いの嫌いなものを取り換えっこするところなど、二人の息があまりにもぴったりで気持ちがいいし、トイレでルーシーの髪がジョージのボタンに絡んでしまうという際どい場面も、ちっともいやらしさが感じられないのが二人のキャラの美点だ。

 監督のマーク・ローレンスは、サンドラ・ブロック主演の『恋は嵐のように』と『デンジャラス・ビューティー』の脚本を担当した人で、この後、ヒュー・グラントとドリュー・バリモアが共演したロマンチック・コメディ『ラブソングができるまで』の監督も務めている。

 この作品はサンドラ・ブロックのプロデュース作品でもあり、ノラ・ジョーンズなど有名人が友情出演しているが、さすがニューヨークの不動産業が舞台なだけに、今話題のあの人、不動産王で大統領候補ドナルド・トランプ氏も顔を出す、しかもセリフ付きで。2002年の作品だが、トランプ氏の髪形が今とまったく変わってないのも見どころの1つ。

ライター 斎藤敦子のプロフィール

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