映画の処方箋

Vol.179

『フライト・ゲーム』

上空1万メートルのノンストップ・サスペンス

 『フライト・ゲーム』は、ハイジャックされた旅客機の中で、たった一人で見えない犯人と対決する航空保安官を描いたノンストップ・サスペンス映画だ。主演は『96時間』シリーズのヒットでアクション映画に新境地を開拓したリーアム・ニーソン。

 ニューヨーク発ロンドン行きの旅客機が大西洋上空を航行中に、警備のために乗り込んでいた航空保安官ビル・マークス(リーアム・ニーソン)の携帯に不審なメールが送られてくる。乗客の一人だというその送り主は、明らかにマークスの行動を監視しており、“1億5千万ドルを指定の口座に送金しなければ、20分ごとに1人を殺す”と脅迫する。同じ機に乗り合わせた同僚のハモンド(アンソン・マウント)は何かの間違いだろうと信じない。マークスは脅迫があったことを機長(ライナス・ローチ)に知らせるが、連邦保安局が送金口座の名義と乗客名簿の調査を終えるには30分かかる。客室乗務員ナンシー(ミシェル・ドッカリー)と隣席に乗り合わせたジェン(ジュリアン・ムーア)の助けを借りて、調理室のモニターでメールに反応する乗客を割り出そうとしたマークスは、疑わしい行動をとるハモンドをトイレで問い詰め、誤って殺してしまう。しかし、犯人は彼ではなかった。さらに20分後、密室のはずの操縦室で機長が死ぬ。連邦保安局は送金口座の名義がマークスのものであり、精神的に問題を抱えた彼が自作自演のハイジャック事件を起こしたものと判断する。果たしてマークスは孤立無援の機内で乗客に化けた犯人を捕まえ、無事に飛行機を着陸させることができるのか。

 原題は“NON-STOP(ノン・ストップ)”で、用意周到な犯人と孤立無援で戦う航空保安官の孤独な戦いを文字通りノン・ストップでスリリングに描く。監督は『エスター』、『アンノウン』で注目されたカタロニア人のジャウム・コレット=セラ。主演は『アンノウン』で組んだリーアム・ニーソンで、コレット=セラは、『96時間』の大ヒット以来、ニーソンのタイプキャスト化した“仕事に没頭するあまり、家庭的に不幸になってしまった男”のキャラを借りて、マークスという男の弱さと強さ、そんな彼をターゲットに企てられた犯罪を構成。最初からターゲットが決まっているので犯人の狙いに過ちがなく、映画のスリルを盛り上げているところがこの映画の長所だ。難を言えば、見ているうちはスリリングでハラハラするけれど、見終わると、犯人があまりにマークスに固執しすぎていて、それほど強い憎しみがどこから生まれたのか疑問に思えてくるところだろうか。

 共演は、マークスを信じてくれる乗客ジェンに、『アリスのままで』で念願のアカデミー主演女優賞を手にした名女優ジュリアン・ムーア。客室乗務員ナンシーに、TVシリーズ「ダウントン・アビー」の伯爵家の長女メアリー役で知られる、眼力の強いミシェル・ドッカリー。機長にTVシリーズ「LAW & ORDER」の地方検事補役で知られる知性派ライナス・ローチ。他に、ナンシーの同僚の客室乗務員に『それでも夜は明ける』のルピタ・ニョンゴ、『ミッドナイト・イン・パリ』でヘミングウェイを演じていたコリー・ストールら。

 もう1度最初から映画を見直すと、冒頭の場面で機内に乗り合わせる乗客たちが(犯人も含めて)さりげなく紹介されていることが分かる。とてもよく考えられた映画だし、B級感があるところも私好みだ。

ライター 斎藤敦子のプロフィール

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