映画の処方箋

Vol.178

『プロメテウス』

リドリー・スコットが描く人類とエイリアンの起源

 1979年に公開されたリドリー・スコットの『エイリアン』は、それまでのSFホラー映画の世界をまったく変えてしまう、文字通りエポック・メイキングな傑作だった。ヒット作の例に漏れず、『エイリアン』も続編が3本も製作され、H・R・ギーガーがデザインしたクリーチャーが独立して登場する『エイリアンVSプレデター』のようなスピンオフも作られた。そのどれにも関係せず、そもそも続編など作ったことのなかったリドリー・スコットが、唯一過去の自作に立ち戻ったのが、『エイリアン』の起源を描いた『プロメテウス』である。

 2089年、考古学者のエリザベス・ショウ博士(ノオミ・ラパス)とチャーリー・ホロウェイ博士(ローガン・マーシャル=グリーン)は、世界中の遺跡から同じ星座を描いた壁画を発見し、それが人類の創造主“エンジニア”からの招待状という仮説を立てる。2年後、ショウ博士の仮説を受け入れたウェイランド・コーポレーションのウェイランド社長(ガイ・ピアース)は、人類の起源の謎を解明するため、自社が所有する宇宙探査船プロメテウス号に科学者グループを乗せ、壁画に描かれた惑星LV223に向かわせる。2093年12月、惑星の大気圏に入ったプロメテウス号は、地表に人工的な直線とドーム型の岩山を見つけて着陸、さっそくショウ博士らとアンドロイドのデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)が調査に向かう。ドーム内部でエンジニアのものと思われる巨大な頭部を発見したショウ博士が船に持ち帰って分析すると、人間と同じDNAを持つ異星人のものであることがわかる。一方、科学者グループとは別行動をとったデヴィッドは、ドームに無数に置かれていた円筒形の容器の1つを秘かに持ち帰り、中に入っていた正体不明の黒い液体をシャンパンに混入し、ホロウェイに飲ませてしまう…。

 当初は『エイリアン5』として企画された『プロメテウス』だが、脚本を書いていたジェームズ・キャメロンが抜けたり、シガニー・ウィーバーが抜けたりと企画が二転三転する間に、次第にエイリアン度が薄れ、“人類の起源の謎”が大きくクローズアップされることになったようだ。冒頭の太古の惑星で異星人が球体の容器から黒い液体を飲んで滝に落ちていき、DNA状になって溶けていく場面などがいい例だろう。ダン・オバノンの書いた『エイリアン』のストーリーがシンプルだったのに比べ、様々なアイデアを足したり引いたりした結果、『プロメテウス』はストーリーが複雑化、しかも極力説明を省いて描いているので、難解度がアップしている。それでも映像に力があり、緊張感が途切れないのは、さすがリドリー・スコットというべきだろう。『エイリアン』らしさが見えてくるのは、黒い液体を飲まされたホロウェイが異変を感じるあたりからで、ここからラストまでは一気呵成である。

 主演は『ミレニアム』シリーズで注目されたスウェーデン出身のノオミ・ラパス。スペイン人フラメンコ歌手の父とスウェーデン人女優の母を持つ異色の女優だ。『エイリアン』ではイアン・ホルム、『エイリアン2』以降はランス・ヘンリクセンが演じたアンドロイド役には『X―MEN』のマグニートー役で知られ、最新作『スティーヴ・ジョブズ』の公開を控えたマイケル・ファスベンダー。ウェイランド社の重役でミッションに懐疑的な監督官に『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のフィリオサ役が強烈だったシャーリーズ・セロン。男気のあるヤネック船長に『刑事ジョン・ルーサー』のイドリス・エルバ。

 これまでのリドリー・スコット作品とは違って、『プロメテウス』には“どこかで見たような”感じがある。例えば、全体的にスタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』、ショウが斧でエイリアンに立ち向かうところは『シャイニング』、ウェイランドという人物やショウが箸で食事するところはロバート・ゼメキスの『コンタクト』といったように。この辺りに『プロメテウス』に対するリドリー・スコットのSF観が現れているように思える。H・R・ギーガーがデザインを担当すれば、まったく違った作品になったかもしれない。

ライター 斎藤敦子のプロフィール

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