映画の処方箋

Vol.169

『グーニーズ』

少年の心に戻って楽しみたい、最高の夏休み映画。

 85年に公開された『グーニーズ』は翌86年公開の『スタンド・バイ・ミー』と並んで、今の父親世代が子供の頃に見て胸をときめかせた二大少年期映画だ。作風は正反対で、スティーヴン・キング原作・ロブ・ライナー監督の『スタンド・バイ・ミー』が、人生のほろ苦さが隠し味なのに対して、スティーヴン・スピルバーグ原案・リチャード・ドナー監督の『グーニーズ』は、海賊が隠した宝を探すというファンタジーで、底抜けに明るい。この夏、仲間でワイワイ騒ぎながら見るのにぴったりな1本だし、父子一緒に見るのもお薦めだ。

 舞台は、オレゴン州アストリアに近い海辺の町グーンドック。風光明媚な町に再開発の波が押し寄せ、父の借金のおかげで自宅を差し押さえられたマイキー(ショーン・アスティン)は親友のグーニーズたち(グーンドックのグーンと、間抜けという意味のグーンをかけたもの)と別れて明日には町を出ていかねばならない。口の達者なマウス(コリー・フェルドマン)、太めで虚言癖のあるチャンク(ジェフ・コーエン)、発明狂のデータ(キー・ホイ・クアン)にマイキーを入れた4人のグーニーズと、マイキーの兄ブランド(ジョシュ・ブローリン)は、歴史博物館で働く歴史好きの父親のコレクションから何か金目のものを探しだそうと屋根裏部屋に行き、1632という年号とスペイン語で説明が書かれた地図を発見する。それはこの地方に伝説として残る海賊“片目のウイリー”の宝を積んだ海賊船のありかを記した地図だった。もしこの地図が本物だったら?と心を躍らせるマイキー。宝を発見すれば家を追い出されなくて済む。グーニーズたちが地図に記された崖の上に行くと、そこは古ぼけたレストランになっており、しかも長男が脱獄したばかりで警察に追われている凶悪なフラテリー一家の隠れ家だった…。

 『グーニーズ』は、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』を監督した後、『カラーパープル』からシリアス路線へ踏み出す前段階のスピルバーグが製作総指揮として手掛けた作品。原案もスピルバーグで、脚本はアンブリン所属のクリス・コロンバスだが、監督がリチャード・ドナーなので、普通のアンブリン作品よりも演出が荒っぽいが、細かなところに拘泥せず、子供たちの勢いをストーリーに取り入れていく手法が楽しさを持続させている。ちなみに、まるで『インディ・ジョーンズ』っぽい地下での宝探し場面はスピルバーグ自身が演出したもの。

 主演のショーン・アスティンは女優パティ・デュークの息子で、これが映画デビュー。今も俳優を続けており、『ロード・オブ・ザ・リング』3部作のサム役や、TVシリーズの『ミュータント・タートルズ』のラファエルの声などを務めた。マウス役のコリー・フェルドマンは、本作と『スタンド・バイ・ミー』のテディ役で強烈な印象を残し、80年代で最も成功した少年俳優となった。その後、『ロストボーイ』や『ミュータント・タートルズ』など、ホラーやファンタ映画方面で活躍。TVシリーズの『ミュータント・タートルズ』では敵役スラッシュの声を担当してショーン・アスティンと共演した。チャンク役のジェフ・コーエンは俳優の道には進まず、カリフォルニア大学バークレー校を優秀な成績で卒業し、現在はショービズ界の弁護士をしている。データ役のキー・ホイ・クアンはしばらく子役を続けていたが、『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』の撮影時に学んだマーシャルアーツを活かしてスタント・コーディネーターに転身した。俳優として最も成功したのはマイキーの兄役のジョシュ・ブローリンだろう。大人の俳優になるまで少し低迷したが、『プラネット・テラー in グラインドハウス』に出演した頃から運がつき始め、コーエン兄弟の『ノーカントリー』、ガス・ヴァン・サントの『ミルク』、オリヴァー・ストーンの『ブッシュ』などで強烈な印象を残している。

 フラテリー一家のママを演じた名脇役アン・ラムジーは、87年にダニー・デヴィートの『鬼ママを殺せ』で、デヴィートの鬼ママを演じてアカデミー助演女優賞にノミネートされたが、同年ガンのために58歳で亡くなった。また、一家の末っ子で、赤ん坊の頃にママに何度も落とされて顔が変形した怪人スロースを演じた元プロ・フットボール選手のジョン・マツザクも89年に38歳の若さで亡くなっている。30年の歳月は本当に長い。が、グーニーズたちの心踊る冒険の1日は、今見ても少しも色あせていない。

ライター 斎藤敦子のプロフィール

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