映画の処方箋

Vol.148

『ロボコップ』

鬼才ヴァーホーヴェンを世に出した近未来SF映画の怪作

 1987年に製作された『ロボコップ』は低予算B級映画ながら、公開されるや世界中で大ヒットし、オランダからハリウッドに進出したばかりの鬼才ポール・ヴァーホーヴェンを一躍メジャー監督に押し上げたばかりでなく、シリーズ化はもとより、アニメ、テレビ、コミック版まで作られ、吹越満のロボコップ演芸を始め、さまざまなサブカルで真似され、影響を与えた怪作である。

 舞台は近未来のデトロイト。警察の運営を委託された巨大企業オムニ社のジョーンズ副社長(ロニー・コックス)は、重役会議で新型巨大ロボットのプレゼンに失敗、部下モートン(ミゲル・ファーラー)のサイボーグ警官のアイデアが採用される。犯罪が横行する危険な西署に転任してきたマーフィ巡査(ピーター・ウェラー)は、ルイス巡査(ナンシー・アレン)と組んで市内をパトロール中に、警官殺しで悪名高い凶悪犯クラレンス(カートウッド・スミス)一味に遭遇、工場跡まで追跡するが惨殺される。こうして殉職したマーフィ巡査の生体部分と機械を合体させたサイボーグ警官“ロボコップ”が誕生。さっそく優秀な性能を発揮して治安は回復、街の人気者になるが、ロボコップの中で消去されたはずのマーフィの記憶が蘇り、人間的な感情に悩まされるようになる…。

 原案と脚本はマイケル・マイナーとエド・ニューマイヤー、それにヴァーホーヴェンが血とブラックユーモアをふんだんに加えて脚色。劇中に登場する南アの紛争に核爆弾が投入されたり、大統領の宇宙からの演説がメチャクチャになる皮肉なテレビ・ニュースの数々は、現代アメリカに対する彼の批判精神の現れだ。

 主役のロボコップは、あごの線の美しさ(顔の下半分しか見えないため)と細身(ロボ・スーツを着るため)を買われたピーター・ウェラーに。彼と相棒になるルイス巡査は、ブライアン・デ・パルマの『殺しのドレス』や『ミッドナイトクロス』で知られるナンシー・アレン。凶悪犯クラレンスには、この役で一躍有名になったカートウッド・スミス。ヴァーホーヴェンはナチの親衛隊長ヒムラーを悪の象徴と考えていて、ヒムラーに似せるためにカートウッド・スミスに眼鏡をかけさせている。オムニ社の副社長役のロニー・コックスは『ビバリーヒルズ・コップ』の刑事部長役で知られる。野心家の部下モートンのミゲル・ファーラーは名優ホセ・ファーラーの息子で、『ロボコップ』が出世作となった。

 ロボ・スーツは、日本のTVシリーズ『宇宙刑事ギャバン』を参考にデザイン。低予算映画としては破格の100万ドルをかけて完成したスーツは予想以上に重く、動きがとれないため、パントマイムを元にした動きを練習していたピーター・ウェラーは、すべてを白紙に戻し、動けない中での動きを作っていったという。

 第1作の大成功で、当然のことながら続編が作られた。『ロボ・コップ2』はピーター・ウェラーとナンシー・アレンのコンビはそのままに、監督が続編請負人アーヴィン・カーシュナーに、原案・脚本に『シン・シティ』のフランク・ミラーが加わる。人間か機械かのアイデンティティに苦しむロボコップの前に、悪のリーダー、ケイン(トム・ヌーナン)の遺体を再生したロボコップ2が現れるというストーリー。

 『ロボ・コップ3』は、監督が『フリークス』や『ドラキュリアン』で知られるコミックおたくのフレッド・デッカーに。ナンシー・アレンは残るものの、ロボコップ役はロバート・バークに交替。日本のカネミツ商事の傘下に入ったオムニ社は、夢の未来都市デルタ・シティ建設に着手。住みかを追われ、地下に潜ってゲリラ化した住民との闘いを中心に描き、カネミツ商事会長役でマコがさすがの演技を見せる。

 “続編は前作を越えられない”という法則に従い、『ロボコップ』も次第に質が低下していくのは否めないが、1作目でヴァーホーヴェンが定めた未来に対するブラックな設定が最後まで効き、楽しめるシリーズになっている。

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ライター 斎藤敦子のプロフィール

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