映画の処方箋

Vol.147

『エクスペンダブルズ』

肉体派のアクションこそ一番面白い。

 シルヴェスター・スタローン、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン。それぞれが主演作を作れるほどのビッグネームが顔を揃え、スタローン自らが脚本・監督を担当、CGやスタントマンに頼らない、肉体の凄さを見せるアクション映画本来の“アナログな”面白さを追求したのが『エクスペンダブルズ』だ。

 “エクスペンダブル”とは一般には事務用品などの消耗品のこと。それが軍隊では犠牲にさせられる兵器や兵力のことを指す。主人公は、自ら“エクスペンダブルズ”(消耗品集団)と名乗る命知らずの傭兵軍団のリーダー、バーニー・ロス(シルヴェスター・スタローン)。小火器から飛行機まで、機械ならなんでもござれのエキスパートで早撃ちの名人だ。ソマリア沖のシージャック事件を解決した軍団に新たな依頼が飛び込む。チャーチと名乗る男(ブルース・ウィリス)が持ち込んだ、南米ヴィレーナ島の独裁者ガルザ将軍(デイヴィッド・ザヤス)の抹殺だ。若手のリー・クリスマス(ジェイソン・ステイサム)を連れて島に偵察に行ったロスは、将軍の後ろに元CIA局員ジェームズ・モンロー(エリック・ロバーツ)と彼の精鋭部隊がいることを知る。将軍の娘ながら、島民を守るために闘うサンドラ(ジセル・イティエ)に心打たれたロスは、イン・ヤン(ジェット・リー)、ヘイル・シーザー(テリー・クルーズ)、トール・ロード(ランディ・クートゥア)を引き連れ、たんに金のためだけでなく、彼女を救うために島に乗り込んでいくのだが…。

 見どころは、もちろんアクション。派手なカーチェイスや爆破シーンももちろんあるが、アクション映画一筋に生きてきたスタローンのアクション哲学が生かされ、他の映画なら絶対にCGで誤魔化したり、スタントマンが替わって演じたであろう際どいシーンまで、きちんと役者が演じている。そのため、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リーという“動ける”アクション・スターをトップに据え、元アメフト選手のテリー・クルーズ、総合格闘技で殿堂入りした名選手ランディ・クートゥア、元プロレスラーのスティーヴ・オースティン(モンローの右腕ダン・ペイン役)ら、文字通りの肉体派を揃えて万全の体制をとった。波止場の軍隊を機銃掃射するため、飛行機のハッチからジェイソン・ステイサムが実際に顔を出す場面など、他の映画なら絶対に撮影不可能だ(保険会社がOKを出さない)。

 これだけスターが揃うと、それぞれに見せ場を作らねばならないのだが、そこもスタローン演出はきっちり押さえていて、それでいて自分にもしっかり見せ場を作っているところがさすがである。ドルフ・ラングレンに麻薬中毒のガンナー・ヤンセンという一種の敵役を振ったのも、『ロッキー4 炎の友情』以来の“男の友情”を感じた。

 スタローンの映画は賞やベストテンとは縁がないものの、興行収入は抜群で、特に男性ファンに絶大な人気がある。それは、どうすれば観客を楽しませられるかを体で知っているからだ。ちょっとくたびれてきたアクション・スターを集めて、『荒野の七人』や『特攻大作戦』のようなアクション映画を作ろうというスタローンのアイデアがまず冴えているし、これだけのスターを集められる人望が素晴らしい。結果、『エクスペンダブルズ』は、現在まで3本が作られる大ヒット・シリーズとなった。

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ライター 斎藤敦子のプロフィール

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