映画の処方箋

Vol.146

『ゴッドファーザー テレビ完全版』

コルレオーネ・ファミリーの血と復讐の歴史を堪能

 フランシス・フォード・コッポラの『ゴッドファーザー』を映画史に残る傑作と呼ぶことに異論はないだろう。1990年にはアメリカ議会図書館に永久保存されることになった、文字通りアメリカの国宝的な映画である。

 コッポラは『ゴッドファーザー』を1972年の第1作から1990年の第3作まで3本撮っているが、1977年には第1作と第2作を合わせて時系列に並べ直し、未公開シーンを加えて再編集したテレビ用の<完全版>を作っている。おそらくは困難を極めた『地獄の黙示録』の製作費を捻出するための措置だったろうが、おかげでコルレオーネ・ファミリーの血と復讐の歴史を時代順に追っていくという別の楽しみが生まれることになった。今回放映される『ゴッドファーザー テレビ完全版』は、その1977年版をデジタル・リストアしたもので、全4話420分(劇場未公開シーン約50分を含む)、内容は次の通りである。

第1章:20世紀初頭のシチリア。土地の顔役に両親と兄を殺された9歳のビト・アンドリーニはアメリカに移住してビト・コルレオーネと名乗る。成長したビト(ロバート・デニーロ)は、イタリア人街を牛耳るボスのファヌッチを殺し、彼に代わって地域の利害を守る“ゴッドファーザー”となる。月日は過ぎ、ビト(マーロン・ブランド)の一人娘コニー(タリア・シャイア)の結婚式が行われているなか、ビトと相談役のトム・ヘイゲン(ロバート・デュバル)が人々の持ち込む問題を解決していると、出征していた三男マイケル(アル・バチーノ)が恋人のケイ(ダイアン・キートン)を連れて帰ってくる。

第2章:ビトは女好きで短気な長男ソニー(ジェームズ・カーン)や気の弱い次男フレド(ジョン・カザール)より、沈着冷静な三男マイケル(アル・パチーノ)を後継者にと考えていたが、麻薬で一儲けしようというソロッツォ(アル・レッティエリ)の申し出を断ったためにファミリー同士の戦争が勃発、クリスマス・イブに街頭で襲撃され、重体となる。復讐に燃えるマイケルは、単身ソロッツォとの手打ちに赴き、立会人のマクラスキー警部(スターリング・ヘイドン)ともども撃ち殺す。

第3章:ほとぼりが覚めるまでシチリアに逃れるマイケル。長男ソニーが殺され、ビトは五大ファミリーのボスを招いて会議を開き、戦争を終結させる。帰国したマイケルは引退した父を継いでゴッドファーザーとなり、ラスベガスに拠点を移して合法的なビジネスへの転換を図るが、すでにカジノ王国を築いていたモー・グリーン(アレックス・ロッコ)と対立、彼のバックにいるユダヤ系マフィア、ハイマン・ロスとの怨恨を生むことになる。

第4章:マイケルはラスベガスのカジノ業に本腰を入れるため、ニューヨークを引き払ってタホ湖畔に拠点を移し、マイアミのハイマン・ロス(リー・ストラスバーグ)と組んでキューバに事業を拡大しようして革命に阻まれる。一方、気弱な次兄フレドが引き起こす問題、妹コニーとの不和、妻ケイの心離れと、家庭内の亀裂は元に戻れないほど深まっていた…。

 見どころは、若きアル・パチーノの丹精な演技、精悍なロバート・デニーロ(カッコイイ!)、老獪なマーロン・ブランド、まだ30代そこそこだったコッポラの天才的な演出力、名匠ゴードン・ウィリスの撮影、ディーン・タヴォラリスの美術、ニーノ・ロータの音楽などなど、すべてと言っていい。私が好きなところは、第1章で若きビトがファヌッチを殺す祭りの場面と、第2章でマイケルがソロッツォとマクラスキーを殺すレストランの場面で、何度見てもドキドキ、ハラハラする。

 今回、ストーリーが時系列に並んだ結果、『ゴッドファーザーPART II』の眼目だった若きビトとマイケルの人生が対照的に描かれる面白みはなくなったが、絶対的な権力を手にした結果、家族すら信頼できず、孤独という名の煉獄に落ちていくマイケルの苦渋が、さらに色濃くなっている。コッポラが420分かけて描いたのは、実は一人の男の成功と転落の軌跡だったのだ。

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ライター 斎藤敦子のプロフィール

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