映画の処方箋

Vol.143

『大空港』

大空港から飛び立ったパニック映画シリーズを一気見。

1970年の『大空港』はオールスター・キャストによるパニック映画の元祖で、アカデミー賞9部門にノミネートされるほど評価も高く、興行的にも大ヒットした。

 あらすじは、豪雪のリンカーン空港から飛び立ったローマ行ボーイング707の機内で爆弾が破裂、元の空港に引き返して緊急着陸することになるが、滑走路は脱輪した機体でふさがれ、使用不能で…、というもの。いわゆるグランドホテル形式で、家庭を顧みないで離婚の危機にある空港長メル・ベイカースフェルド(バート・ランカスター)と、彼と恋仲の地上職員ターニャ(ジーン・セバーグ)、メルの姉と結婚しているプレイボーイの機長ヴァーノン・デマレスト(ディーン・マーティン)と浮気相手の客室乗務員グエン(ジャクリーン・ビセット)、失業中の土木技術者ゲレーロ(ヴァン・ヘフリン)と家計を助けるためにダイナーで働く妻イネーズ(モーリン・ステイプルトン)、凄腕の整備士ジョー・パトローニ(ジョージ・ケネディ)、無賃搭乗常習犯のクォンセット夫人(ヘレン・ヘイズ)ら、それぞれのストーリーが錯綜する。

 原作は<ホテル><ストロング・メディスン>といった業界の内幕物で知られるアーサー・ヘイリー。監督は名匠ジョージ・シートンで、多数の登場人物が複雑に交錯する原作をほぼ忠実に正攻法の演出で描ききっている。さすがに昔と今とでは、空港の規模や機能、セキュリティ問題など隔世の感があるが、ヘレン・ヘイズ、モーリン・ステイプルトン、ヴァン・ヘフリンといった名優の演技は見応えがあるし(アカデミー助演女優賞にヘレン・ヘイズとモーリン・ステイプルトンがWノミネート。結局ヘレンが受賞したが、モーリンはゴールデングローブ賞を受賞)、クライマックスの傷ついた機体での着陸シーンは、大丈夫と思って見ていてもスリリングだ。

 『エアポート’75』は、『大空港』から4年後に製作された続編で、題名にエアポートとつくものの、舞台は空港ではなく飛行機。2階建ての巨大なボーイング747、愛称ジャンボジェットである。濃霧のためソルトレイクシティに緊急着陸しようとしたボーイング747にセスナ機が衝突、機長が重傷を負う。恋人の客室乗務員を助けるため、ベテランパイロットが外から飛行中の機内へ飛び移ろうとする、というあらすじ。

 出演は、ベテランパイロットにチャールトン・ヘストン、彼の恋人の客室乗務員にカレン・ブラック、セスナ機の操縦士にダナ・アンドリュースら。このシリーズは、ストーリーも配役もまったく別個の作品だが(アーサー・ヘイリーの原作は1作目だけ)、唯一の共通点がジョージ・ケネディ演じるジョー・パトローニである。それでも役職は作品毎に違っていて、本作では航空会社の副社長に昇進。また、前作の『大空港』ほど名優の名演があるわけではないが、それでも本作が遺作となる伝説の大女優グロリア・スワンソン、『エクソシスト』で人気絶頂のリンダ・ブレア、無声映画時代から活躍した名女優マーナ・ロイなどの競演が映画ファンを楽しませてくれる。

 シリーズ3作目『エアポート’77』は、大富豪の美術品と招待客を乗せ、フロリダへ向かうボーイング747が強盗一味にハイジャックされ、濃霧と操縦ミスで墜落、海底に沈んでしまう。出演は大富豪スティーヴンスにジェームズ・スチュワート、ギャラガー機長にジャック・レモン、機長の恋人イヴにブレンダ・バッカロ。ジョージ・ケネディはジャンボ機の製造責任者役。ゲスト出演は『第三の男』のジョセフ・コットン、『風と共に去りぬ』のオリヴィア・デ・ハヴィランド、怪奇映画の帝王クリストファー・リーら。海底に沈んだ機体から生存者をどうやって救い出すかが見どころだ。

 4作目『エアポート’80』は、ワシントンを発ってパリ経由でオリンピック開催のモスクワへ向かうコンコルド機を、武器の不正輸出の証拠を握られた兵器産業の社長が搭乗中の恋人もろとも撃ち落とそうとする、というシリーズ中最もとんでもない展開。

 出演はフランス人機長にアラン・ドロン、彼の恋人の客室乗務員にシルヴィア・クリステル、兵器産業社長にロバート・ワグナー、その恋人のニュースキャスターにスーザン・ブレイクリーら。今回ジョージ・ケネディは何と機長役でコンコルドを操縦する!

 この映画は1980年のモスクワ・オリンピックをネタにしているが、映画が出来上がったときにはアメリカを始め西側諸国が参加を取りやめていたので設定から変なのだが、それが気にならないほど唖然とする映画ではある。

 コンコルドはご存知のように2000年にパリのシャルル・ドゴール空港で墜落事故を起こし、その影響もあって2003年に運航を停止した。したがって、本作は全席がファーストという豪華な機内も含め、コンコルドがじっくり見られる貴重な映画なのだが、2000年に墜落したコンコルドが、なんと実際に撮影に使われた機体で、そういう意味でも貴重である。ちなみに『大空港』のボーイング707も1989年にブラジル・サンパウロで墜落炎上していて、飛行機と映画との相性はあまりよくないのかもしれない。

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ライター 斎藤敦子のプロフィール

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