映画の処方箋

Vol.134

『カンヌ映画祭ラインナップ発表』

今年のカンヌ映画祭の見どころは?

今年67回目となるカンヌ国際映画祭、4月17日にパリで記者会見が開かれ、コンペティション部門のラインナップが発表になった。

まず驚いたのはジャン=リュック・ゴダールの登場。『言語よ、さらば(原題)』というタイトルも、いかにもゴダールだが、盟友フランソワ・トリュフォーは既に鬼籍に入り、アラン・レネも今年亡くなったなか、常に先頭に立って映画を革新し続ける鬼才の旺盛な創作活動を頼もしく思う。

映画祭常連組では、パルム・ドール受賞2回のジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟の『2日と1夜(原題)』、受賞1回のケン・ローチの『ジミーズ・ホール(原題)』、ヴェネツィア映画祭で金獅子賞を受賞したアンドレイ・ズビヤギンツェフの『リヴァイアサン(原題)』など。日本からは河瀬直美の新作『2つ目の窓』がエントリー。今年は中国も韓国もゼロで、河瀬直美が女の細腕でアジアを一身に背負う。

中でも楽しみなのはマイク・リーの『ミスター・ターナー(原題)』だ。夏目漱石の<坊ちゃん>にも登場するイギリスの風景画家ターナーの伝記映画で、『トプシー・ターヴィー』でオペレッタ<ミカド>で有名なギルバート&サリヴァンを見事に料理して見せたリーの手腕に期待。もう1本はデヴィッド・クローネンバーグの『スターへの地図(原題)』。前作『コズモポリス』で金融が支配する現代社会を皮肉った彼が、今度はハリウッドを舞台にアメリカ社会を皮肉ってみせる。出演は前作に引き続きロバート・パティンソンで、ジュリアン・ムーア、ミア・ワシコウスカ、ジョン・キューザックとエキセントリック系の俳優が並んでいるのも楽しみ。

地元フランスからは、オリヴィエ・ダアンの『グレース・オブ・モナコ(原題)』がオープニングを飾り(ただしコンペ外)、ベルトラン・ボネロの『サンローラン(原題)』、オリヴィエ・アサヤスの『シルス・マリア(原題)』、ミシェル・アザナヴィシウスの『ザ・サーチ(原題)』の4本(ゴダールはスイス人)。

『グレース・オブ・モナコ(原題)』はニコール・キッドマンがモナコ王妃となったグレース・ケリーを演じる伝記映画、『サンローラン(原題)』は、もちろんファッション・デザイナーのサンローランの伝記映画で、『ハンニバル・ライジング』のガスパール・ウリエル主演。今年は伝記映画が多い印象。なぜかカンヌではいまだ無冠なオリヴィエ・アサヤスの『シルス・マリア(原題)』は、ジュリエット・ビノシュ主演で、カサヴェテスの『オープニング・ナイト』とマンキウィッツの『イヴの総て』を合わせたような映画のよう。アサヤスとは逆に初コンペの『アーティスト』で男優賞を獲った勢いで米アカデミー賞まで制してしまった幸運児ミシェル・アザナヴィシウスの『ザ・サーチ(原題)』は、フレッド・ジンネマンの『山河遙かなり』のリメイク(おそらくはバロディー版)。舞台を第二次大戦後から内戦後のチェチェンに移し、モンゴメリー・クリフトが演じたGIをアネット・ベニングが演じる。

アメリカ勢は2本。まずは長編監督デビュー作でカンヌ初登場した『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』で男優賞を受賞したトミー・リー・ジョーンズの2度目の登場。その『ホームズマン(原題)』は、『ラスト・シューティスト』などで知られるブランドン・スウォースアウトの原作。開拓時代を舞台にしたロードムービーでヒラリー・スワンクとトミー・リーの主演。『マネーボール』で脚光を浴びたベネット・ミラーの『フォックスキャッチャー(原題)』は、レスリングのオリンピック金メダリストのマーク・シュルツと兄デイヴの伝記映画(今年は本当に伝記映画が多いです)。マークをチャニング・テイタム、デイヴをマーク・ラファロ、デイヴを殺害するジョン・デュポンをスティーヴ・カレル(適役)が演じる。マーク・シュルツはのちにプロレスに転向してブラジルでアントニオ猪木と関係があったり、カミングアウトしたり、なかなか興味深い人物のよう。

最後に私が最も期待している1本を。それがグザヴィエ・ドランの『マミー(原題)』で、2009年に弱冠20歳で監督週間に出品した『マイ・マザー』で3賞を独占し、“恐るべき子供”と言われたドランが、いよいよコンペに登場(5年経ってもまだ25歳!)。しかも『マイ・マザー』で強烈な母親を演じたアンヌ・ドルヴァルと『私はロランス』のスザンヌ・クレマンの共演というのも期待大だ。

さて、今年のカンヌは5月14日夜の『グレース・オブ・モナコ(原題)』上映から。今から開幕が待ち遠しい!

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ライター 斎藤敦子のプロフィール

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