映画の処方箋

Vol.111

『ダイ・ハード2』

ご存知、世界一運の悪い刑事のダイ・ハードな闘い第2弾。

新作『GIジョー バック2リベンジ』でも相変わらず世界の平和のために骨身を惜しまず汗を流しているブルース・ウィリス。彼のキャリアには2度の転機があった。1度目は『こちらブルームーン探偵社』(1985-89年)のオーディションを受け、3000人の候補者から選ばれてシヴィル・シェパードの相手役になったこと。2度目は1988年に主演したジョン・マクティアナン監督の『ダイ・ハード』が記録的な大ヒットになり、最新作『ラスト・デイ』まで5本が製作されるヒット・シリーズとなったことだ。

『ダイ・ハード』シリーズの最高傑作は、当然のことながらジョン・マクティアナンによる第1作だが、レニー・ハーリンによる第2作『ダイ・ハード2』も、1作目の高層ビルより広い空港を舞台に敵の数もアクションもスケールアップして遜色ない出来だ。

1990年、クリスマス休暇を過ごしに義父母のいるワシントンに来た、今はロス市警のジョン・マクレーン刑事(ブルース・ウィリス)は、ダレス空港に妻ホリー(ボニー・ベデリア)を迎え来て、さっそく駐車禁止の違反切符を切られて警官と一悶着。あいにくの悪天候で便の到着が遅延になり、カフェテリアで待つうちに不審な男たちを目撃。彼らを追って荷物仕分け室に入ると、いきなり銃撃される。彼らはスチュアート大佐(ウィリアム・サドラー)率いる傭兵部隊の一員で、南米から移送されてくる麻薬王エスベランザ将軍(フランコ・ネロ)を奪還しようとしていたのだ。空港の機能をマヒさせた大佐は、着陸寸前の飛行機を人質にエスベランザ将軍の身柄を要求。ホリーの乗った機が人質になったと知ったマクレーンは、たった一人で傭兵部隊に立ち向かう…。

原作はウォルター・ウェイジャーの<ケネディ空港着陸不可能>だが、『ダイ・ハード』らしい脚色がなされている。妻ホリーは相変わらずナカトミ商事に勤めていて、夫より稼いでいそうだし、ウィリアム・アザートン演じる嫌味なTVリポーターは、前作でホリーに殴られ、裁判所から接近禁止命令を出してもらったのにもかかわらず同じ機に乗り合わせ、レジナルド・ヴェルジョンソン演じるアル・パウエル巡査もまた離れたところからマクレーンを助けてくれる。ストーリー展開もスムーズで、息もつかせぬノンストップ・アクションに仕上がった。

面白いと思ったのは、今から23年前の1990年という時代。バブル真っ盛りで、女性は前髪を立て、パッドで肩をいからせていた。まだ携帯はなく、マクレーンはポケベルで連絡を受け、公衆電話で機上の妻と会話する。ブルース・ウィリスにも髪がまだたっぷりあって、お肌もつやつや、動きがきびきびしているのが嬉しい。

今見ると配役も豪華だ。スチュアート大佐のウィリアム・サドラーは『ショーシャンクの空に』の服役囚や『ロズウェル/星の恋人たち』の保安官、最近では『アイアンマン3』の大統領だし、管制部長のフレッド・ダルトン・トンプソンは、この後『LAW&ORDER』の地方検事役になる。エスペランザ将軍のフランコ・ネロはマカロニ・ウェスタンの大スターで、『ジャンゴ 繋がれざる者』にも出ていた。『スタートレック』に出演する前のコルム・ミーニーがウィンザー機の機長、『ターミネーター2』のT-1000役でブレークする前のロバート・パトリックが傭兵の一人で出演(建設中のターミナル・ビルでマクレーンを襲う役)。探せば、もっといろんな俳優が発見できるかもしれない。

俳優がそれなりに出世していったのに対して、ただ一人、本作で頂点を極めた感があるのが監督のレニー・ハーリンだ。一時はハリウッドで最も成功したフィンランド人と言われた彼だが、その後ジーナ・ディヴィスと付き合い始めて運が傾き、今はテレビ界に活躍の場を移している。ゆえに、今のところ『ダイ・ハード2』がレニー・ハーリンの最高傑作と言えるだろう。フィンランド人のハーリンに敬意を表してクライマックスで国民的作曲家シベリウスの交響詩<フィンランディア>が鳴り響くが、それを栄光の頂点で終わらせないよう、今後の奮起を期待したいところだ。

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ライター 斎藤敦子のプロフィール

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