映画の処方箋

Vol.109

『トレマーズ』

B級映画愛によって進化する地中の怪物

『トレマーズ』は90年にスマッシュ・ヒットしたパニック映画。いわゆるクリーチャーもので、地中を自在に動き回る謎の怪物が西部の村を襲う、というのがプロット。1作目がヒットすれば、2匹、3匹と、そこにある限りのドジョウをすくうハリウッド黄金の方程式により、04年まで4作が製作された。

1作目のヒットの要因はケヴィン・ベーコンとフレッド・ウォード演じる凸凹コンビの間抜けな掛け合い(89年に大ヒットした『ビルとテッドの大冒険』から93年の『ウェインズ・ワールド』へ至る系列)と、変人揃いの住人が醸し出すユーモラスな雰囲気。それに地面を割って現れる不気味な怪物の恐怖が絶妙にブレンドされ、一風変わったパニック映画に仕上がったこと。

舞台は砂漠の中の架空の町パーフェクション。町には中国人のウォルター・チャン(ヴィクター・ウォン)が経営するマーケットが1軒あるだけ。住んでいるのは、住人の雑用を引き受けて気ままに暮らすバル(ケヴィン・ベーコン)とアール(フレッド・ウォード)、自宅に核シェルターを供えたミリタリーおたくのバート(マイケル・グロス)夫婦や、陶芸家のナンシーに娘のミンディ、悪戯好きな少年メルヴィンら。ある日、雑用ばかりの生活に飽き飽きし、町を出て行こうとしたバルとアールは、鉄塔の上に登ったまま死んでいるエドガー老人や、羊飼いのフレッド老人が頭だけ残して殺されているのに遭遇。地質調査中の女子大生ロンダ(フィン・カーター)の地震計が不審な震動を記録したことと関係があるのか。村で1台だけのチャンの店の電話が通じなくなり、隣町の警察を呼びに行くことになった二人の車に、得体の知れない生物が絡みついて…。

さて、95年の続編『トレマーズ2』は、前作から7年後の設定。ケヴィン・ベーコンが(予算の関係からか)抜けてフレッド・ウォードが主役。地中の怪物は今や“グラボイド”(複数グラボイズ、ウジ虫の怪物という意味で、前作でウォルター・チャンが命名)という名で有名になっている。ストーリーは、事業に失敗し、町に戻って細々と暮らしているアールに、メキシコの油田会社から1匹5万ドルの賞金で怪物退治の仕事が舞い込む。アールがグラボイドおたくのタクシー運転手グレイディ(クリストファー・ガーディン)を連れてメキシコに向かうと、すでに作業員6人が殺され、地質学者のケイト(ヘレン・シェイバー)と作業員3人が残るのみ。そこでパーフェクションから頼りになる助っ人、今は妻に逃げられたミリタリーおたく、バートを呼び寄せるが…。

03年の続々編『トレマーズ3』では、さらにフレッド・ウォードが抜け、バート役のマイケル・グロスが(ついに)主役の座に。舞台は事件から11年後のパーフェクション(人口5人)。外国で怪物退治をしていたバートが久々に町に戻ってくると、チャンの店は娘ジョディ(スーザン・チャン)が継ぎ、ミンディやメルヴィンも立派に成長。グラボイズで町おこしとばかり、グッズが売られ、テーマパークさえ出来ている。新たに住人になったジャック(ショーン・クリスチャン)が観光客を案内していると本物のグラボイドが現れ、相棒が食われてしまう。さっそくバートが退治に乗りだそうとすると、突然、政府の役人が現れ、大型爬虫類の絶滅危惧種だからと殺生を禁じられてしまう…。

続々々編『トレマーズ4』は1作目の前日譚で、いわば『トレマーズ・ビギニング』。舞台はパーフェクションの前身の町リジェクション、主人公はバートの曾祖父ハイラム(もちろんマイケル・グロス)。鉱山主である彼が、坑夫を襲う怪物を退治しようと乗り出す。

『トレマーズ』シリーズの人気が衰えないのは、ほぼ同じスタッフが一貫して関わり、自分たちが生み出したプロットやキャラクターを大切に育てたことと、クリーチャーもののパロディとして楽しんで作っている、“B級映画愛”に溢れていることだろう。グラボイドという、ひどい臭いのする地中の怪物が、2作目ではシュリーカーという地上を歩ける小怪物に分裂し、3作目に至っては、おならの噴射で空を飛ぶアスブラスターに進化するだなんて。こんなにバカバカしいクリーチャーものは滅多にない。

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ライター 斎藤敦子のプロフィール

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