映画の処方箋

Vol.106

『エクスペンダブルズ』

本物のアクション映画を知る男による新たなシリーズ第1弾

4月公開の『ライジング・ドラゴン』でジャッキー・チェンのリアルなスタントが最後と聞き、ちょっとしみじみしてしまった。人間が生ものである以上、俳優にも賞味期限があって当然。中でもアクションスターは、肉体を酷使するうえ、怪我も多いから、普通の俳優より賞味期限はずっと短い。年寄りの冷や水と笑われないうちに、ジャッキーのように引退した方がいいのかもしれない。

ところが、ジャッキーより8歳上のシルヴェスター・スタローンの場合、話は別だ。2006年に『ロッキー・ザ・・ファイナル』を撮り、2008年に『ランボー 最後の戦場』を撮って、2つの超人気シリーズに自ら終止符を打ち、これでアクションスター人生に幕を引いたのかと思いきや、直後の2010年に新たなアクション映画を大ヒットさせてシリーズ化も果たし、引退などどこ吹く風と意気軒昂なのだ。それが現在3作目を製作中の『エクスペンダブルズ』である。

“エクスペンダブル”とは軍隊用語で“犠牲にしうる兵”、“捨て石”のこと。数々の戦場をくぐり抜けてきたバーニー・ロス(スタローン)率いる傭兵集団“エクスペンダブルズ”は、ソマリア沖で人質救出作戦を成功させた後、元傭兵仲間で今はタトゥー師をしているツール(ミッキー・ローク)からメキシコ湾に浮かぶ小さな島ヴィレーナの独裁者ガルザ将軍を抹殺する依頼があったと告げられる。相棒のリー(ジェイソン・ステイサム)と偵察に向かったロスは、元CIAのジェームズ・モンロー(エリック・ロバーツ)がコカイン栽培で大金を儲けるため、将軍を陰で操っていることを知る。表向きモンローを始末できないCIAからの依頼と知って、一度は断ったロスだが、命の危険を覚悟で島に残った将軍の娘サンドラ(ジゼル・イティエ)を救うために再び島に向かう決意をする。

スタローンの映画は、自ら脚本を書き、監督し、体を張って主演してきた者のプロフェッショナリズムに貫かれている。プロットは一見単純だが、画面は観客を楽しませようとする奉仕精神に溢れている。いつも口下手で、ぶっきらぼうなマッチョを演じているので、うっかり騙されてしまうが、実はとても繊細な、頭のいい人なのだろう。まさにプロ中のプロである。

アクション映画とアクション俳優を誰よりも知る男によって“エクスペンダブルズ”に選ばれた男たちとは――ロスの相棒リー役に新世代のアクションスター、ジェイソン・ステイサム、武術の使い手にして金にうるさいイン・ヤン役に中国武術チャンピオン出身のジェット・リー、タトゥー師ツール役にボクサーでもあったミッキー・ローク、ガンマニアのヘイル・シーザー役にNFLの元プロ・フットボール選手テリー・クルーズ、トール・ロード役に元ヘビー級チャンピオンのボクサー、ランディ・クートゥア。一方の敵役には、エリック・ロバーツの用心棒ペイン役に元プロレスラーの“ストーン・コールド”スティーヴ・オースティン、ガルザ将軍役にNY市警の本物の警官だったデヴィッド・ザヤスといった肉体派の面々。もちろん、ブルース・ウィリスとアーノルド・シュワルツェネッガーというスーパースターの特別出演もびっくりだが、私が注目したのは傭兵軍団内の悪役に『ロッキー4 炎の友情』でスタローンが抜擢してスターにしたドルフ・ラングレンを配したこと。ラングレンもまた嫌がらずにこの役を引き受けたことに男の友情を感じた。隅から隅まで骨っぽい、男の映画である。

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ライター 斎藤敦子のプロフィール

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