映画の処方箋

Vol.098

「ラブ・アクチュアリー」

クリスマスをめぐる愛情と友情のモザイク模様

日本でも1年の締めくくりとしてすっかり定着したクリスマス。本来はイエス・キリスト生誕を祝う西洋諸国最大のお祭りで、どんなに偏屈な変わり者も、この日ばかりは家族と一緒に祝いの席に着くのが決まりになっている。おもちゃ屋とケーキ屋にとっては一番のかき入れ時だが、映画界も例外でなく、家族愛と奇跡をテーマに、さまざまなクリスマス映画が作られてきた。『ラブ・アクチュアリー』もまたクリスマスを切り口に様々な人々の愛の“実際”を描いた群像劇で、監督は英国を代表する名脚本家リチャード・カーティス。原題の“Love actually”は、カーティスが脚本を担当した『フォー・ウェディング』のメイン・テーマ曲だったスコットランドのロックバンドWet Wet Wetの“Love is all around”からとられている。

空港の到着ゲートの場面をはさんで、8組のカップルの愛情と友情の物語が見事なモザイク模様に組みあげられているので、ストーリーを一口に説明するのは難しい。カーティスの監督デビューを祝って、英国を代表するスター俳優たちがこぞって出演している。主な登場人物は、首相に就任したばかりの独身の保守党党首ヒュー・グラント、妻を亡くし、小学生の息子の初恋に手を焼くリーアム・ニーソン、プレイボーイの小説家コリン・ファース、フェアトレードの会社を運営するアラン・リックマン、彼の妻でヒュー・グラントの姉エマ・トンプソン、アラン・リックマンの部下でハンサムなデザイナーに片思い中のローラ・リニー、黒人青年と結婚したばかりの新妻キーラ・ナイトレイら。昔のヒット曲をクリスマス・ソングに衣替えし、カムバックを図るロック歌手ビル・ナイのストーリーが映画全体の狂言回しとして使われている。

その他の脇役も豪華。ヒュー・グラントの嫉妬を誘うアメリカ大統領にビリー・ボブ・ソーントン(アンジェリーナ・ジョリーの元カレ)、親友の新妻キーラ・ナイトレイに恋をしてしまう青年にアンドリュー・リンカーン(TV『ウォーキング・デッド』のリック)、コリン・ファースとベッドインしているキュートな美女はシエンナ・ギロリー(『バイオハザード』のジル・バレンタイン)、赤裸々なセックスシーンの撮影中に、相手役の女優を礼儀正しくデートに誘う俳優はマーティン・フリーマン(『レンブラントの夜警』『ホビット 思いがけない冒険』)、そしてカーティスの学友にして盟友のミスター・ビーンことローワン・アトキンソンがデパートの宝石売り場の店員役で友情出演し、リチャード・カーティスの義母ジル・フロイドが首相公邸のメイド頭役でカメオ出演している。

映画に登場する愛の形はさまざま。ヒュー・グラントとコリン・ファースの恋は見事に成就するが、夫の浮気に気づいてしまうエマ・トンプソンの愛はほろ苦く、片思いの相手を諦めなければならないローラ・リニーの恋は辛い。映画を見る時の気分や状況によって、さまざまな見方ができるし、最後はほんわか幸せな気分になれる。まさに家族で楽しむクリスマスにぴったりな1本である。

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ライター 斎藤敦子のプロフィール

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