映画の処方箋

Vol.090

「ラストサマー」

ひと夏の青春の思い出が恐怖に変わるとき…

独立記念日を祝う祭りの夜、ジュリー(ジェニファー・ラヴ・ヒューイット)は、ボーイフレンドのレイ(フレディ・プリンゼJr)、親友のヘレン(サラ・ミシェル・ゲラー)、バリー(ライアン・フィリップ)の4人で浜辺へドライブに出かける。9月からボストンの大学へ進学するジュリーは、ニューヨークへ行くレイと最後の思い出を作るつもりだった。だが、その帰り、車の前に飛び出した人影を轢いてしまう。4人は死体を海に捨て、この夜のことは死ぬまで秘密にしようと誓うのだが、1年後、“去年の夏、お前が何をしたか知っているぞ”と書かれた手紙が届く…。

『ラストサマー』は、斬新なパロディ版ホラー映画『スクリーム』を大ヒットさせたケヴィン・ウィリアムソンが企画し、脚本を手がけた作品で、テイスト的にも『スクリーム』と自伝的要素を盛り込んだテレビ・シリーズ『ドーソンズ・クリーク』との間にある(『ラストサマー』の4人が訪れる浜辺はドーソンズ・ビーチという。よほどドーソンという名に思い入れがあるのだろう)。ウィリアムソンのプロデューサー感覚が優れていたのは、この映画を単なるホラー映画ではなく、青春群像劇にホラー要素を取り入れた、青春ホラー映画とも言うべき新しいジャンルに仕立てたことだ。一躍“ホラー・クイーン”となるジェニファーの魅力と相まって、若い観客に大いに受け、類似の作品をたくさん生み出すことになった。

事件が起こるのは7月4日の独立記念日。9月に新学期が始まる欧米では、夏休みは単に暑くて長い休みではなく、新しい人生に踏み出す前に、それまでの生活に区切りをつけるという特別な意味がある。頭がよく、ボストンの大学に進学することになったジュリー、ニューヨークに行くレイ、町のミスコンで優勝し、女優の道に進むヘレン、プロのアメフト選手を目指すバリー。4人の前途にはキラキラ輝く未来が待っているはずだった。それが、思いがけない事件で運命が暗転。成績不振で夏期講習を受けたジュリー、地元に帰って猟師になったレイ、女優の夢を断念し、父親の店の売り子になったヘレン、ヘレンと別れ、無軌道な生活を続けるバリー。1年後の4人はまるで別人に。ここまでは、まるで“ひと夏の体験”をテーマにした青春映画だが、そこに1通の脅迫状が届くことによって、ほろ苦い青春映画が、一転、恐怖のホラー映画に変わるのである。

見どころは、何といっても売り出し中の4人の青春スターの魅力だろう。ジェニファー・ラヴ・ヒューイットの清純な美しさは、この頃が最高だし、今や堂々たる俳優に成長したライアン・フィリップのやんちゃなドラ息子ぶり、直後にテレビ・シリーズ『バフィー 恋する十字架』でブレークし、レイ役のフレディ・プリンゼJrと結婚するサラ・ミシェル・ゲラーのキュートな魅力も光っている。

『ラストサマー2』は前作の大ヒットを受けて、ジュリー役のジェニファー・ラヴ・ヒューイットを主役にした続編。いまだに悪夢に悩まされているジュリーは、夏休みは地元に戻らないと決め、大学の友人カーラ(ブランディ・ノーウッド)、カーラのボーイフレンドのタイレル(メキ・ファイファー)、ウィル(マシュー・セトル)の4人でクイズの懸賞で当たったバハマ旅行へ出かけることになる。ところが、着いた孤島のリゾート・ホテルは古くて、いわくありげなうえに、ハリケーンのシーズン到来で閑散としている。そこに“去年の夏、お前が何をしたか、まだ知っているぞ”という脅迫が…。

脚本はウィリアムソンからトレイ・キャラウェイに代わり、青春群像劇的な要素は薄まったものの、よりホラー度が増している。ハリケーンで閉じ込められる怪しげなホテルは、キューブリックの名作『シャイニング』の雪嵐で外界と隔絶したオーバールック・ホテルのパロディだろう。ちなみに、バハマ旅行が当たるクイズ“ブラジルの首都は?”に、ジュリーとカーラは“リオ・デ・ジャネイロ”と答えるのだが(頭がいいはずのジュリーの進級が毎年危うくなるのは、単に悪夢のせいばかりではないことがわかる)、この誤った“正解”がストーリーの伏線になっていることは言うまでもない(もちろん正解はブラジリアである)。

キャストは、ジェニファーを除いて前作より小粒になった感があるが、この映画の後、メキ・ファイファーは『ER 緊急救命室』のプラット医師役で有名になるし、マシュー・セトルは『ゴシップガール』のダンとジェニーの父親役で有名になる、という具合に、現在活躍中の俳優たちの若き姿が見られるという点では貴重。おまけに、プロのシンガーでもあるジェニファーの歌も聴けるし(ホテルのカラオケで歌う“I will survive”、ラスト・クレジットで流れる“How do I deal”)、カメオ出演(クレジットなし)のジャック・ブラックの怪演も楽しい。

もっと見る

ライター 斎藤敦子のプロフィール

前へ次へ

HOMEへ戻る