映画の処方箋

Vol.082

「We LOVE カンヌ映画祭」

ブルース・ウィリスからオドレイ・トトゥまで、今年のカンヌを盛り上げるスター達。

フランス大統領戦の影響で、今年はちょっと遅めの5月16日に開幕する第65回カンヌ国際映画祭。今年のイメージ・キャラクター(ポスター)は、没後50周年を迎えるマリリン・モンローだ。16日のオープニングを飾るのは、ウェス・アンダーソン監督の『ムーンライズ・キングダム』。映画は『ダージリン急行』のアンダーソンらしい、ボーイスカウトのキャンプを舞台にしたオフビートなコメディ(らしい)で、出演はブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレーら(以下、映画のタイトルはすべて原題を仮に訳したものです)

19日に発表になったコンペティション部門のラインナップを見てみよう。残念ながら、日本映画はゼロ。去年ゼロだった韓国映画は、ホン・サンス監督、イザベル・ユペール主演の『他国で』、イム・サンス監督『金(マネー)の味』の2本をエントリーし、雪辱を果たした。ただし、イランのアッバス・キアロスタミ監督『ライク・サムワン・イン・ラブ(恋する誰かのように)』は、日本の製作で、主演は高梨臨(『侍戦隊シンケンジャー』のシンケンピンク役)だから、ある意味“日本映画”と言えるかもしれない。

今年の特徴はベテラン勢が多いこと。新人監督の作品は1本もなく、すでにパルム・ドールを受賞した監督が4人エントリー。内訳は、前述のアッバス・キアロスタミ(1997年『桜桃の味』)、『天使の分け前』のケン・ローチ(2006年『麦の穂を揺らす風』)、『丘の向こう側』のクリスティアン・ムンジウ(2007年『4ヶ月、3週と2日』)、『愛』のミヒャエル・ハネケ(2009年『白いリボン』)である。

彼ら以上の大ベテランと言えるのが、『お楽しみはこれからだ』のアラン・レネ監督。レネはトリュフォーやゴダールと並ぶヌーヴェル・ヴァーグを代表する名監督で、ヴェネチア映画祭では『去年マリエンバートで』で1961年に金獅子賞を受賞しているが、カンヌの大賞はまだ。レネ以上にフランス勢の目玉といえるのは、完全復活したレオス・カラックスの『ホーリー・モーターズ』だろう。カラックスは2008年にオムニバス映画『TOKYO!』の1編を監督しているが、長編は1999年の『ポーラX』以来13年ぶりなのだ。そして、2009年に『預言者』が(ハネケのおかげで)惜しくもパルムを逃したジャック・オーディアール監督の『錆と骨』も楽しみ。主演は最近アメリカ映画の出演が多いマリオン・コティヤール。フランス映画は以上の3本だが、フランスは開催国としてコンペに4本の枠を持っているので、もしかすると昨年の『アーティスト』のように、ぎりぎりでラインナップに“格上げ”になる映画があるかもしれない。

クロージングを飾るのは、先頃急逝したクロード・ミレール監督の遺作『テレーズ・デスケルウ』。1927年に発表されたフランソワ・モーリアックの同名小説の映画化で、夫を毒殺しようとする怖い妻をオドレイ・トトゥが演じる。ミレールは、シャルロット・ゲンズブールの出世作『なまいきシャルロット』の監督として有名だが、ゴダールやトリュフォーの製作助手として映画界に入った人で、最後のヌーヴェル・ヴァーグ世代といっていい。まだゴダール、レネという大物は存命だが、ヌーヴェル・ヴァーグとその時代がますます遠ざかっていくことを感じる。

さて、今年の台風の目になりそうなのは、なんといってもデヴィッド・クローネンバーグ監督の『コズモポリス』だろう。ジョン・デリーロの同名小説の映画化で、大金持ちの若き投資家の姿を通して現代という時代の危うさを描いたもの。主演は『トワイライト・サーガ』シリーズのロバート・パティンソンだ。ブラジル人のウォルター・サレス監督がジャック・ケルアックの<路上>の映画化に挑戦した『オン・ザ・ロード』も楽しみ。主演は『コントロール』のサム・ライリーだ。

加えて、リー・ダニエルズ監督、ザック・エフロン主演の『ペーパーボーイ』、アンドリュー・ドミニク監督、ブラッド・ピット主演の『キリング・ゼム・ソフトリー(奴らを優しく殺せ)』、ジョン・ヒルコート監督、トム・ハーディ、シャイア・ラブーフ主演の『ロウレス(無法者)』、ジェフ・ニコルズ監督、マシュー・マコノヒー、リース・ウィザースプーン主演の『マッド』といったアメリカ勢がコンペを圧倒。今年もまたレッドカーペットを歩くスター達が映画祭を華やかに盛り上げてくれるだろう。

もっと見る

ライター 斎藤敦子のプロフィール

前へ次へ

HOMEへ戻る