Vol.075 | 『オーストラリア』 |
---|
百%オーストラリア製ハイブリッド西部劇
映画には恋愛、コメディ、ミュージカル、アクション、SF、ホラーなどのジャンルがあって、たいてい1本の映画には1本のジャンルが振り当てられる。だからこそレンタルDVD屋の棚の仕分けが可能なわけだが、たまに複数のジャンルをまたいだハイブリッドな映画が登場する。バズ・ラーマンの『オーストラリア』は、その1本だ。
なにせ“オーストラリア”と聞いただけでは、建国の苦難を描いた歴史映画なのか、それともカンガルーの生態を描いたドキュメンタリーなのかわからない。が、実はどんな映画でもビジュアルを見れば映画の売りがわかるもので、『オーストラリア』の場合は、中央でニコール・キッドマンとヒュー・ジャックマンが頬寄せ、その横にアボリジニの老人と少年、背景に戦闘機の影が描かれたポスターおよびジャケットのイメージがそれ。つまり、この映画には美男美女のロマンスがあり、マイノリティー問題があり、戦争があるということ。だが、それだけではない。
ここで、あらすじを簡単に紹介しよう。日本軍が真珠湾を攻撃する少し前のこと。オーストラリアの領地に行ったまま帰らない夫を連れ戻し、土地を売るために英国からレディ・サラ・アシュレイ(ニコール・キッドマン)が港町ダーウィンにやってくる。夫アシュレイ卿が迎えに差し向けたのはドローヴァー(牛追い)と呼ばれる荒くれ男(ヒュー・ジャックマン)。彼はアシュレイ卿に頼まれ1500頭の牛を港まで移動させることになっていた。その辺りの土地は食肉王キング・カーニー(ブライアン・ブラウン)のもので、食肉業の独占を狙うカーニーにとって、アシュレイ卿は目の上のコブだった。領地に到着したサラを待っていたのは、牧童のフレッチャー(デヴィッド・ウェンハム)と夫アシュレイ卿の遺体だった。フレッチャーによれば、夫はキング・ジョージ(デヴィッド・ガルピリル)というアボリジニの槍で殺されたという。アボリジニの少年ナラからフレッチャーがカーニーに領地の牛を横流ししていると聞いたサラは、彼をクビにし、夫の計画を引き継いで、自ら牛をダーウィンまで動かして軍に売り、その金で領地を立て直そうと決意するのだが…という風に進んでいく。つまり、ジャンルはハイブリッドだが、ストーリーの基本は西部劇、なのである。