映画の処方箋

Vol.063

『ターミネーター4』

サイバー化する殺人マシーンと人類の闘い

映画がヒットすると、たちまち続編が作られる映画界を揶揄して“柳の下にどじょうは2匹いる”と言うが、2匹どころか、シリーズ化されれば3匹、4匹と増えていく。手っ取り早くヒット作にあやかろうという姿勢を安易と受け取る人もいるだろうが、手を変え品を変え、当たったネタを使い尽くそうとする映画屋魂に私は敬意を表する。しかも、今はテクノロジーの進歩で、わざわざ柳の下を探さなくても、どじょうなんか何匹だってCGで作ってしまえるのだ。

ジェームズ・キャメロンが創造した『ターミネーター』の場合、これまでのところ、どじょうは4匹発見されている(5匹目も発見されたという噂)。ただし、キャメロン自身が手がけたオリジナル2作とその後の2作の間には当然のことながら大きな差がある。これはタイムパラドックスで生じた矛盾(製作上の都合とも言う)を回避しようとして、どんどん筋を変えていったのが理由の1つだが、さらにその後の2作、『ターミネーター3』と『ターミネーター4』の間にはさらに大きな差があって、ジョナサン・モストウが監督した『ターミネーター3』を、前2作を完結させようという意図で作られた“3匹目のどじょう”とすれば、オリジナルが設定した未来世界に舞台を移したマックGによる『ターミネーター4』は、電脳世界の“サイバーどじょう”なのである。その理由は実際に映画を見ていただくとして−。

『ターミネーター4』の舞台は2018年。2004年にスカイネットによって“審判の日”が起きた後、生き残った人々は抵抗軍を組織して、スカイネット率いる機械軍と戦っている。部隊を率いるジョン・コナー(クリスチャン・ベイル)は、スカイネットがマシーンとの交信に使っているシグナルをオフにする作戦に志願する。嵐の砂漠に、どこからか謎の男が現れる。マーカス・ライト(サム・ワーシントン)と名乗るその男こそ、2003年に“人類の未来のために”、処刑後の体をサイバーダイン社に献体した死刑囚だった。頭と心臓以外は機械化され、人類と機械のハイブリッドとなった彼を、抵抗軍の人々はマシーンの手先と疑うが、コナーは、自分の父親となるはずのカイル・リース(アントン・イェルチン)を救うため、あえてマーカスと共にサンフランシスコのスカイネット本部に向かう…。

前3作との最も大きな違いは、『ターミネーター4』はSF映画というより、むしろ戦争映画のテイストに近いことだ。描かれている戦争も『ターミネーター』イメージされた未来の戦争とはまったく違う。それはキャメロンとマックGの演出の違いもあるだろうが、1作目の1984年から4作目の2009年に至る間の時代の変化によるところが大きい。戦闘は、もはやヴェトナム戦争のようなジャングルでの白兵戦ではなく、遠くからヘリや爆撃機が飛んできてターゲットを爆破する、手の汚れないテクノ戦争へと変わった。加えてマックGはCGの扱いが抜群にうまい。例えば、クリスチャン・ベイルの乗ったヘリが撃ち落とされ、地上でマシーンの攻撃を受ける導入部のスピード感と迫力。ヘリを使った戦闘といってもリドリー・スコットの『ブラックホーク・ダウン』の重厚さとはひと味違う、現実感のない軽さが彼の特徴だ。戦争といってもあくまでSF映画なのだから、あまり深刻になられても困るし、適度に嘘臭くないと安心して楽しめない。『チャーリーズ・エンジェル』もそうだが、マックGの映画はゲーム感覚に溢れていて、どんなに兵士が死のうと、すぐにリセット出来そうな気配がある。それだけ時代のサイバー化に対応できているということかもしれない。

主演は『バットマン・リターンズ』からバットマン役を継承したクリスチャン・ベイルと、『アバター』でも人間と異種族のハイブリッドとなったサム・ワーシントン。偶然か必然か、新世代を代表する、これ以上はない顔合わせだ。

『ターミネーター4』には、将来、移植医学が果てしなく進歩していき、人間がどんどんサイボーグ化されていったら、どこまで人間といえるのか? 人間の人間らしさとは何か?という面白いテーマが含まれている。そのことを踏まえると、『ターミネーター』のT-800(シュワルツェネッガー)、『ターミネーター2』のT-1000(ロバート・パトリック)、『ターミネーター3』のT-X(クリスタナ・ローケン)といった強烈な殺戮機械ではなく、ぐっと人間寄りの“ターミネーター”が登場する意味がわかってくる。マシーンに対するヴィジョンが前3作よりさらに進化し、サイバー化したとも言えるだろう。よく見ると、マックGとスタッフが驚くほどターミネーターおたくで、前作までの設定をストーリーの中に細かく組み込んでいることに気づいて微笑ましい。

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ライター 斎藤敦子のプロフィール

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