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「ゴッドファーザー」

2013/09/06 更新

 すべてがエポックメイキングな本物の名作

 『風と共に去りぬ』がハリウッドの大河メロドラマの歴史を変えたように、ギャング映画の歴史を変えたエポックメイキングな作品が『ゴッドファーザー』である。1972年の初公開時に、すでに名作の風格が備わっていたが、今見ても新鮮な驚きが体験できる真の傑作だ。

 “ゴッドファーザー”とはキリスト教用語で代父のこと。代子の洗礼に立ち会い、後見人として導く役割を受け持つ“親”のことである。この代父と代子の縁から生まれる疑似家族を組織作りに利用したのがイタリア系マフィアで、ニューヨークを縄張りにする架空のコルレオーネ一家を主人公に、血で血を洗うマフィアの抗争を“ファミリー”という側面から描き出したのがマリオ・プーゾのベストセラー<ゴッドファーザー>だった。

 記念すべき第1作『ゴッドファーザー』は、ニューヨーク五大マフィアの1つ、コルレオーネ・ファミリーの“ゴッドファーザー”、ドン・ヴィトー・コルレオーネ(マーロン・ブランド)の邸宅で、末娘コニー(タリア・シャイア)の結婚披露宴が行われているところから始まる。ヴィトーには長男ソニー(ジェームズ・カーン)、次男フレド(ジョン・カザール)、三男マイケル(アル・パチーノ)という3人の息子と、 イタリア系ではないが息子同様に育てた頭の切れるトム・ヘイゲン(ロバート・デュバル)がいて、相談役(コンシリオーリ)としてヴィトーを補佐している。第二次大戦が終わり、出征していたマイケルが英雄となって帰国する。家業を嫌って堅気の道を歩もうとしていたマイケルだが、父ヴィトーが凶弾に倒れたことを知り、ファミリーを守るため、自らマフィアの抗争に飛び込んでいく。

 『ゴッドファーザーPARTⅡ』は、コルレオーネ・ファミリーのゴッドファーザーとなったマイケルのその後の抗争と、若き日のヴィトー(ロバート・デ・ニーロ)がアメリカでファミリーを築いていく様が平行して語られる。

 『ゴッドファーザーPARTⅢ』は、1980年代に実際に起こったバチカンの金融スキャンダルを下敷きに、マフィアの絶対的なボスとなったマイケルの晩年を描いたもの。病魔に冒されたマイケルはバチカンの力を借りて組織を合法化して引退しようとするが、長兄ソニーの息子ヴィンセント(アンディ・ガルシア)を後継者に指名したことから抗争が巻き起こる。

 フランシス・フォード・コッポラは1939年生まれ。第1作を監督したときは、まだ33歳の若さだったが、73年『カンバセーション…盗聴…』でカンヌ映画祭パルム・ドール、74年『ゴッドファーザーPARTⅡ』でアカデミー賞監督賞、79年『地獄の黙示録』でカンヌ映画祭で2度目のパルム・ドールを受賞し、押しも押されもせぬ大監督に。ただし、『ワン・フロム・ザ・ハート』の興行的失敗以後、紆余曲折の道を歩むことになるのはご存知の通りで、『ゴッドファーザー』シリーズがコッポラの創作力が最も充実していた時期の作品といって間違いない。

 スタッフも一流揃い。レンブラントの絵画を参考にしたというゴードン・ウィリスの撮影は今もお手本とされるくらいだし、名匠ニーノ・ロータの音楽は、誰もが1度は耳にしたことがあるはず。

 『ゴッドファーザー』シリーズは数々の名優を生んだことでもエポックメイキングだ。当初ロバート・レッドフォードが予定されていたマイケル役に抜擢されたアル・パチーノ、マイケル役のオーディションには落ちたものの、若きヴィトー役に抜擢されたロバート・デ・ニーロと、アメリカを代表する2大名優に出世のきっかけを与えたという意味でも特筆すべき作品である。

ライター:齋藤敦子
映画評論家。パリで映画編集を学んだ。フランス映画社宣伝部から90年にフリーとなる。 G・ノエ、グリーナウェイの諸作品を字幕翻訳。最新作は「麦の穂をゆらす風」。 「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)「奇跡の海」(幻冬舎文庫) 「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書も。 当サイトの「映画の処方箋」でも隔週連載中。