アカデミー賞スペシャル2014 86th Academy Awards

2ヶ月連続企画のアカデミー賞スペシャル2014。受賞作計32作品のほか、関連番組を放送。さらに発表日3月3日(月)は、8:00から現地より生中継!
第86回アカデミー賞3/3(月)受賞結果発表!
衛生生中継!第86回アカデミー賞レッドカーペット
速報!第86回アカデミー賞
第86回アカデミー賞セレブ・ファッション一刀両断
みんなで大予想!オスカーを当てろ!
特別番組|ムービープラス presents アカデミー賞レッドカーペット|J:COMテレビで無料体験!
Column&Recipe コラム&レシピ
トークセッション〜女優はつらいよ、レッドカーペット〜
エッセイ|女がドレスを纏うということ
トークセッション〜女優はつらいよ、レッドカーペット〜
3/3(月)日本時間に発表される映画の祭典“第86回アカデミー賞”。毎年、オスカーの行方とともに注目されるのがセレブたちのファッション。アカデミー賞を楽しむために“映画”と“ファッション”のスペシャリストたちが集結。<レッドカーペットファッションの現状><映画と女優とブランドの関係><近年公開されたおしゃれファッション映画><最新ファッショントレンドから見る今年のレッドカーペッドのファッション予想>など、専門家ならではの現場裏話も交えてトーク。アカデミー賞の楽しみ方のひとつ“女優たちによるファッションバトル”に今年も注目です!

テーマ
2013年(第85回)アカデミー賞レッドカペットを振返って【00:24】
2013年の映画をファッションレビュー【18:09】
2014年のファッショントレンドは?【30:30】
2014年(第86回)レッドカーペットファッションを大予想【37:42】
トークセッション〜映画と女優とファッション編〜
“映画”と“ファッション”のスペシャリストたちが<映画と女優とファッション>についてディープに語る。古くはオードリー・ヘップバーンとジバンシィの関係から、ヌーヴェルヴァーグ、日本映画など、映画の中でのファッションが果たす役割などをプロの視点で解釈。あの有名女優に偶然会ったエピソードも。
出演者
南馬越一義 (BEAMS創造研究所 シニアクリエイティブディレクター)
軍地彩弓 (ファッション・クリエイティブ・ディレクター)
立田敦子 (映画ジャーナリスト)
さかいもゆる (海外セレブウォッチャー)
まつゆう* (クリエイター/ブロガー)
エッセイ|女がドレスを纏うということ
レッドカーペットはデンジャラス地帯

エッセイ|女がドレスを纏うということいわゆる“レッドカーペットのファッションチェック”なるテーマが海外のみならず日本のファッション誌や、それこそ「ムービープラス」の生中継などを通じて定着したのは、まだここ10年くらいの話だと思う。その間、エディターとしてたびたび海外のアワード授賞式や映画祭を取材で訪れる機会をいただいてきたけれど、基本的に乗り込むメディア関係者のほとんどは映画の専門家なのに対して、私はけっこう早い段階からレッドカーペット狙いだった。まったく異端な話である。さらに言うなら、雑誌的にマストなファッション斬りというより、その日その時のレッドカーペットに等しく身を置かれたときに、どの役者が圧倒的なスターであると同時に男性としても女性をエスコートできていたかとか、どの女優がオートクチュールのドレスに負けない内面の輝きを放っていたか…みたいなことを生意気にも見極めたいという欲求のほうがずっと勝っていた。

 思うにレッドカーペットはその人のオーラが否応なく明るみに出る、ある意味でデンジャラスな場所。その認識は取材を始めた初期に植え付けられたもので、写真ではなく映像や生の現場でしか伝わらないものがある。たとえば、今年のアカデミー賞にウディ・アレン監督の『ブルージャスミン』で主演女優賞にノミネートされているケイト・ブランシェットあたりは正統派のアルマーニからストイックなマックイーンまでを着こなせるファッションでも優等生で知られているけれど、万が一レッドカーペットでの振る舞いが思いのほかすかしてたり、ファンやメディアに対してハートフルじゃなかったら、やっぱり本物じゃないと思う。そんな女優の残念なふるまいを感じ取って、ゴシップ誌が「あなた、女としての幸せじゃないでしょ?」みたいなことまで勘ぐりたくなる気持ちだって、わからなくない(彼女はけしてそんな雰囲気を醸した人ではなかったけど)。

 そういう意味でハリウッドのレッドカーペット、特にオスカーナイトのそれは今さら言うまでもないけれど、エミー賞や前哨戦のものとは比にならないネタが満載。会場となっているコダックシアター前の目抜き通りを封鎖して敷かれたレッドカーペットの随所に、センスよりボリューム勝負のフラワーアレンジメントがディスプレイされていたり(まさに花道!)、アカデミー公式シェフで知られるウルフ・ギャング・パックが見たこともない巨大なお盆に乗っかったケータリングフードを運ぶ姿からしてエンターテインメントしていたり、スポンサーであるモエ・エ・シャンドンのこれまた巨大なボトルが鎮座していたり、ほかにも中国や中東のテレビ局の台頭、各国の美人レポーターのオスカー女優以上の気合いを感じるドレスアップ、周辺のアフターパーティの数もハンパない。そのうえ、映画祭などと違って一夜限りなので、スターが分散せず、その日だけに集中するのも豪華。しかも名実ともに世界を代表する顔ぶればかりときているから、実際は取材をしていてもファッションを見ている余裕はなかなかなくて、次から次へと登場するビッグネームの姿を見つけてはいちいち感動しているうちに終わってしまったというのが、以前に初めて訪れたアカデミー賞の正直な実体験だった。

ソフィア・コッポラからの気づき

 ただし、である。思いきってぶっちゃけると、ここ数年はどう企画を転がしても最終的にはアメリカ的というか、どこか安易にも取れるファッションチェックに落とすばかりでいいのだろうか…という違和感が大きくなっていたのも事実で、それこそ10年の間にリーマンショックがあって、震災があって、隣国との関係にも危機感が叫ばれ始めた日本がこんな時代だからこそなんとなく付いていけなくなってきた感じ、と言えば正しいだろうか。
 そんななか、昨秋『ブリングリング』のプロモーションで来日したソフィア・コッポラにインタビューをしたときに、彼女がきっぱり言い放った「いまの時代は社会全体がセレブリティというものに重きを置きすぎている。“セレブリティのようでなければいけない”という価値観を若者に押し付けてさえいる。このアンバランスさを、映画を通じて検証してみたいと思った」との言葉には、腑に落ちるものがあった。ご存じの通り、同作はハリウッドのティーンネイジャーが窃盗団となってセレブの自宅に侵入。盗んだブランドのゴージャスなドレスやジュエリーで着飾ることで、偽物のセレブとしてのアイテンディティを獲得していく実際の事件に基づいた作品。まさに“レッドカーペットのファッションチェック”が知らないうちに人々に押し付けがちな現代の盲点を描いているとも言える。

 だからこそということではないけれど、レッドカーペットショーに夢中になる一方で、そもそも女性にとってドレスを纏うことの本質だったり、そんな瞬間がある人生の色っぽさに想いを馳せたいと思うのである。「ムービープラス」を愛好する映画ファンであれば、そんな欲求を往年のクラシックムービーに求めてみても正解じゃないだろうか。

エッセイ|女がドレスを纏うということ  ぱっと思い出せるだけでも、たとえばあの“サブリナ・パンツ”を生んだ『麗しのサブリナ』(1954年)で、「ジバンシィ」の創始者であるユベール・ド・ジバンシィがオードリー・ヘップバーンのためにデザインしたカクテルドレス。ロングアイランドの大富豪の兄弟が暮らす家の運転手の娘として育ったサブリナが、パリでの花嫁修業を経て見違えるように洗練され、地元に戻った夜のパーティで幼いころから密かに憧れてきた弟にコンプレックスを克服してアタックする勝負ドレスとしてあまりに有名。また、グレース・ケリー演じる令嬢が宝石泥棒に恋をするヒッチコックの名作『泥棒成金』(1955年)はコート・ダジュールが舞台のとびきりお洒落な映画だけれど、18世紀をテーマにした仮装パーティでグレースがまさにレッドカーペットに登場するシーンで着ていたルイ15世時代のゴールドのドレス、泥棒の正体を明かすまいとデートを拒否する恋の相手をビーチホテルでのお部屋デートに半ば強引に招いたときの純白のドレスも印象的だ。『泥棒成金』ではグレースのファッションセンスに信頼を置いていたヒッチコックがその衣装のすべてを彼女の自由にさせたというレジェンドも素敵で、ドレスを纏うことで手が届かなそうなロマンスに最後までアグレッシブであろうとする女性を描いたこれらの作品は、恋や愛に誰もが消極的になって久しい時代でなんとかしてパートナーを手に入れなければならない私たちには、改めてビビッドな作品と言いたい。

 ちなみにグレース・ケリーといえば、「ムービープラス」が長年日本でのオフィシャル・ブロードキャスターを担ってきたカンヌ映画祭の今年度のオープニング作品として、ニコール・キッドマンがグレースを演じた『Grace of Monaco(原題)』の上映が発表されたばかり。後にモナコ公妃となったグレース・ファッションの再来に勝手に期待して、今年は映画だけでなくレッドカーペットにおいてもニコールのドレスアップにご注目を。
プロフィール岡田有加(おかだ・ゆか)
「anan」編集部を経て、雑誌編集者およびキャスターの石川次郎氏に師事。独立後はエディター、インタビュアー、エッセイスト、プロデューサーとして多分野で活動。ファッションからライフスタイルまで幅広いジャンルの企画を手がける一方、カンヌ映画祭やオスカーをはじめとする海外のレッドカーペットやファッションブランドパーティをモード×エンターテインメントの観点から取材してきた第一人者。現在は川村元気氏をはじめ各界の気鋭クリエイターの連載や企画を数々のメジャー雑誌で担当、役者や映画業界との交流も深い。1974年生まれ。
http://yukaokada.tumblr.com/

写真:アフロ ムービープラスアカデミー賞スペシャル2014 / 写真:AP/アフロ  ムービープラスアカデミー賞スペシャル2014 / 写真:ロイター/アフロ ムービープラスアカデミー賞スペシャル2014